ジェンソン・バトンは、インディカーでのジャスティン・ウィルソンの死亡事故を受け、シングルシーターにクローズドコクピットが導入されるべき時が来たと述べた。F1ドライバーの中には同様の意見を述べる者もいれば、はっきりと反対を唱える者もいる。
ウィルソンは先月ポコノ戦で、他車のパーツが頭部に当たり、命を落とした。
モータースポーツ界は長年ドライバーの安全性向上に努めているが、いまだに死亡事故をなくすことができない。バトンは、オープンコクピットという伝統にこだわる時期は過ぎたと考えている。
「『これがオープンコクピット・レーシングだ。オープンコクピットのまま変わるべきじゃない』。そう言うドライバーは多いし、僕もそのひとりだった」とバトン。
「でもあまりにも多くの事故が起きた。もうヘッドレストを変えるようなことだけではなくて、何か大きな変更をするべき時が来たと思う。何らかの形でキャノピーをマシンにつけるべきだ。この数年、たくさんの事故が起きてきた。起こってはならないことだ」
「今のモータースポーツでこんなことが起きてはならない。もう70年代じゃないんだ。僕らはもっとよく理解すべきだ」
「キャノピーをつけることを選択すべきだろう。もちろん時間はかかるだろうが」
「来年のF1では無理だろうが、すぐにでも実現する必要がある」
チームメイトのフェルナンド・アロンソも、クローズドコクピットに反対していない。
「僕としてはどんなソリューションも受け入れる。今の技術であれば、大きな問題なくクローズドコクピットが実現できるだろう」
「WECはクローズドコクピットだけど、問題は起きていない」
ダニエル・リカルドもバトンと同意見で、長年死亡事故を完全になくすことはできずにいるが、クローズドコクピットは解決のための「パズルの最後のピース」であり「安全性のために伝統を捨てるべき」と述べている。
一方、ルイス・ハミルトンはオープンコクピットへのこだわりを見せている。
「難しい問題だ。悩ましい。クローズドコクピットに将来向かう可能性はあると思うけど、僕は小さいころからオープンコクピットのこのスポーツを見てきた」
「変えるのは簡単なことではない。でも変更すべき場合もあるだろう」
「僕自身がそれを望むかどうかは、分からない。キャノピーやウィンドーが頭の上にあったら、すごく変な感じがするだろうね。でも今、あまりにもたくさんの死亡事故が起きている。昔に比べればずいぶん減ったけれど、それでもかなり多い。絶対に事故は起こしてはならない。ただ、クローズドにする必要はないかもしれない。今いろいろなアイデアが検討されているように、何かのメカニズムを導入すればいいかもしれない」
ニコ・ヒュルケンベルグははっきりと反対だと主張している。
「僕としては反対だ。いい面と悪い面があるけれど、シングルシーター・レーシングはオープンコクピットであるべきだ。この世界に入った時点である程度のリスクがあることは分かっている。危険なことが起こる可能性があるってことをね。それがモータースポーツというレースのDNAの一部なんだ」
「心配される要素をすべて取り除こうとして、過剰に分析的に、すべてにおいて過保護に対処すべきではない。このスポーツのためにもならない。魅力が減るかもしれない」
FIAは今月末にコクピットを保護する2種類のデバイスをテストする予定となっている。ひとつはメルセデスのアイデアで、ドライバーの頭部を覆い、前方中央で固定されるフープ、もう1種類はさまざまな高さの翼状のもので、これをシャシーの上部、ドライバーの前部に、ドライバーからはほとんど見えない角度で設置する。