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浜田省吾が世代を超えて支持される理由とは? 約35年ぶりの音楽番組出演から読む

2015年09月10日 07:41  リアルサウンド

リアルサウンド

浜田省吾

 浜田省吾が9月12日に放送されるNHKの音楽番組『SONGS』に出演することが決定し、話題を呼んでいる。テレビのレギュラー音楽番組に登場するのは実に約35年ぶり。海外でのトーク映像やリハーサルスタジオでの演奏シーンなど、貴重な映像の数々が放送される予定だ。


 浜田は4月29日にオリジナル・アルバム『Journey of a Songwriter ~ 旅するソングライター』をリリースし、オリコン週間アルバムランキングで2週連続首位を獲得。2週連続の首位は60代のアーティストとしてシングル・アルバムを通じて史上初の快挙となり、その高い人気が健在であることを改めて示した。また、アルバムリリース後の5月1日には、同じく35年ぶりにラジオパーソナリティとして『浜田省吾と山口智充のオールナイトニッポンGOLD』に出演し、相手役となるぐっさんこと山口智充と音楽談義に華を咲かせるなど、目立った活動が続いていた。(参考:浜田省吾、35年ぶりのラジオパーソナリティで山口智充と音楽談義 作品への思い語る


 秋から始まるライブツアー『ON THE ROAD 2015 “Journey of a Songwriter”』のチケットも即完売し、プラチナチケット化している。浜田のライブは、メディア露出が極めて少ないアーティストということもあってか、1980年代から非常に人気が高く、当時から入手困難だったが、今回は約10年ぶりのアルバムツアーということもあり、その熱気が加速しているようだ。


 浜田のような長いキャリアを持つアーティストは近年、新たな黄金期を迎える傾向がある。サザンオールスターズが3月31日にリリースした10年ぶりの新アルバム『葡萄』は、50万枚を超える大ヒットとなった。浜田と同じく今年、音楽活動40周年を迎える山下達郎は、10月9日の千葉公演を皮切りに、半年間にわたって35都市64公演を行うロングツアー『PERFORMANCE 2015-2016』を開催することが決定しており、その動向が期待されている。世代は異なるが、DREAMS COME TRUEが7月7日に発売したベストアルバム『DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム』も、出荷枚数が90万枚を突破し、ミリオンセールスが目前だ。そのほか、2013年に再結成を果したプリンセス プリンセスは、同年に女性バンドとしては史上初の東京ドーム公演を行って成功を収め、今年8月に20年ぶり再結成を果したレベッカも大きな注目を集めている。


 先日、リアルサウンドにて掲載した記事『ドリカム、ベスト盤90万枚突破の背景は? 「思い出需要」だけではないヒットの理由』でも指摘しているように、彼らの作品がヒットしている背景には、リアルタイムで聴いていた層だけではなく、その子世代にも人気が伝わり、楽曲群が広く愛される“スタンダードナンバー”となっていることが挙げられるだろう。前出したアーティストはいまも歌い継がれる代表曲を持っていて、たとえば浜田であれば「悲しみは雪のように」や「もうひとつの土曜日」などは、口ずさむことができる若い世代も少なくないはずだ。インターネットが興隆し、過去の情報にアクセスすることが容易になった昨今、世代を越えて人気を獲得するアーティストの存在は、さらに顕著となっていくのかもしれない。


 今回のテレビ出演に際し、浜田は「2005年にリリースされたオリジナル・アルバムとしての前作は「My First Love is Rock & Roll」というテーマで作りました。それから10年後の、今回の新しいアルバムは人生の時と音楽の旅がテーマです。音楽の幅も広くなっていますし、歌の主人公たちも10年分成長したかな、と思います。旅をしながら創ってきたたくさんの歌の中から、いくつかの新しい歌を『SONGS』でお届けします」とコメントしている。『Journey of a Songwriter ~ 旅するソングライター』は、表題曲の「旅するソングライター」で円熟した音楽性と詩世界を見せているほか、最新のヴォーカル・エフェクトを取り入れたダンスナンバー「夜はこれから」などで、新たなサウンドも提示している。リアルタイムで浜田の作品を聴いていたリスナーにとってはもちろん、浜田の代表曲に触れてきた若い世代にとっても、同番組は興味深い内容となりそうだ。(文=松下博夫)