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今宮純によるイタリアGPドライバー採点&短評

2015年09月08日 20:41  AUTOSPORT web

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初めてのフェラーリお膝元で表彰台に上がったベッテル
今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。F1第12戦イタリアGPの週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレーを重視して採点する。(最高点は星5つ☆☆☆☆☆)

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☆ ウィル・スティーブンス
 チーム2台の完走率/信頼性はマクラーレン以上だ。イギリスGPからリタイアはない。他チームのペナルティによるグリッドダウンでスティーブンス13番手、メリ14番手と今季最上位からのスタート。抜かれるのは必至でもフェルナンド・アロンソの後ろで8周の間、15番手をキープした。マノー精いっぱいのモンツァ力走だった。

☆ ロマン・グロージャン
 3位表彰台のスパから英国の工場に戻せず、直送されたマシンを木曜の現場で準備したチームの底力。機材などが底をつき、タイヤウォーマーをフェラーリやザウバーから借りたと小松エンジニアは語った。その状況を乗り越えた予選8位アタックを評価。だが、パストール・マルドナドとともに接触ダメージを負い、1周リタイア。これからアジアラウンド遠征転戦に臨めるか。どうなるロータス?

☆ カルロス・サインツJr.
 5戦ぶりのフィニッシュ、無得点でも善戦敢闘だ。入賞を重ねるチームメイト、マックス・フェルスタッペンに焦りを感じはじめていただけに、この11位には価値がある。

☆☆ キミ・ライコネン
 まさか、2013年中国GP以来のフロントロウに舞い上がったのではないだろう。きれいなアタックランで得た2位を台無しにしたスタート失敗、すぐにアンチストール解除操作をしたものの全車に抜かれた。それからの挽回戦に見ごたえあり。相手とのギャップをじりじり詰めていき、抜くときはズバッと。熟練の技に客席のティフォシも総立ち。

☆☆ マックス・フェルスタッペン
 ドライブスルーペナルティー受けたあと、意気消沈するかと思いきや、彼の集中力は途切れなかった。ルノー勢“最速ラップ(4位相当)”が、それを証明する。

☆☆☆ ジェンソン・バトン
 リタイアの指令にピット内でグローブを放り投げたアロンソ、ふたりのレーシングハートは明らかに揺れている。争える相手は、お互いだけ。ソフトタイヤでスタートして先行したバトンは仕掛けてくる他の相手との防衛戦に没頭、頻繁にミラーをチェック。現状のマシンとパワーユニットで14位以上は、とても望めない。噂される来季候補の若いドライバーに、同じ働きはできまい。

☆☆☆ セルジオ・ペレス
 フォース・インディア14点獲得で、再びロータスからコンストラクターズ5位の座を奪還。コンスタントなペースでタイヤマネージメントを遂行、彼らしさが光る。ライコネンに迫られると、無駄な抵抗をせずに行かせた。気が早いが、2か月後のメキシコGPが楽しみ。スパとモンツァ連続上位入賞で母国ファンの期待を煽っている。

☆☆☆☆ フェリペ・マッサ
 モンツァ名物のひとつが、パドック入口でドライバーを待ちかまえる人だかり。日曜の朝、偶然メルセデス・ワゴンと出くわすとマッサ御一行だった。お父さんはサイン責め、息子さんはサンルーフを開けてはしゃぎっぱなし。本人がドアを開けて手を振り上げると「フェ―リッペ!」コールが。2010年、2014年に続く表彰台3位、やるときはやるマッサのラストスパートは巧妙だった。コース幅いっぱいの“ブロックライン”にバルテリ・ボッタスも引かざるを得なかった。

☆☆☆☆ ダニエル・リカルド
 最終ラップ、最後のパラボリカ、そこでエリクソンをかわした。残念ながら国際映像の画面はなし。モンツァでは、こういう名場面が多々あった。どういうトリックを駆使して抜いたのか、生で見た観客の特権だろう。19番手→8位、リカルドのオーバーテイク才能は現役トップレベルと言えるだろう。

☆☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
 モンツァも完璧だった。ポール・トゥ・ウイン、全周回トップ、最速ラップ、F1ではめったにないグランドスラムを達成。イタリアGPで見たのは1990年アイルトン・セナ以来と記憶する。今季7連続ポールポジションで7勝。通算40勝、あとひとつでセバスチャン・ベッテル同様、セナの記録に並ぶ。あの人を追いかけて……それがハミルトンの内なるモチベーション。もしシンガポール、そして鈴鹿で抜いたら、かつてミハエル・シューマッハーが号泣したようにエモーショナルな心境になってしまうかもしれない。独り言だが、いまのルイスはアイルトン全盛期にかなり似てきた気がする。

☆☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
 これをやりたくて、ここにきた──。フェラーリ移籍後、初モンツァで2位。表彰台ではじけたベッテル。先輩シューマッハーは1996年優勝、アロンソは2010年優勝、ライコネンは2007年3位。迎えられたエースには地元での「宿命」がある。FP1から、どのコーナーでも予選モード、インラップでも適当に流さない走りを感じた。「みんなに観られている」から、やりきるのが跳ね馬エースの矜持。これが実はものすごいプレッシャーになると1950年代から幾多のエースが言っている。25.042秒差の2位に日曜9万人、週末16万人のファンたちは満足。プレスルームから見ていて、今年は歓声や手拍子がエキゾースト音をかき消すほどだった。空中表彰台で有頂天のベッテル、二度とない初めてのフェラーリ母国戦で感動に酔う姿は、これまでのエースと一緒だった。