トップへ

Google Play Music、Apple Musicに続き日本上陸 小野島大に聞く、サービス内容と今後の課題

2015年09月08日 18:41  リアルサウンド

リアルサウンド

『Google Play Music』

 今年5月のAWAを皮切りに、LINE MUSIC、Apple Musicと次々と音楽ストリーミングサービスが登場する中、9月3日、日本にまた新たな音楽ストリーミングサービスが誕生した。インターネット最大手Googleが手がける音楽サービス『Google Play Music』である。日本における4大音楽サービスが出揃ったこのタイミングで、Google Play Musicについてふれておきたい。


(関連:海外と日本におけるライブストリーミング配信の差とは? 各フェスの事例を比較してみた


 Google Play Musicは、これまで世界各国でサービスを提供しており、日本でのサービス開始は60カ国目にあたる。国内外のレーベルの楽曲を3500万曲以上揃え、Android、iOS、PCなど、どの端末からも無制限にアクセスができる。料金は、月額980円。登録後30日間は無料でサービスを試すことができ、10月18日までの申込みで月額780円が適用となる特別プランが用意されている。


 今回のGoogle Play Musicサービス開始について、電子書籍『音楽配信はどこへ向かう?』(impress QuickBooks)の著者である小野島大氏に話を聞いた。


「ざっとした印象では、これまでのさまざまなストリーミング系サービスをうまく研究して、それらの良いところを取り入れながらつくっているな、というかんじです。すでに多くの国で導入されている実績と、しかも日本で先行して始まったいくつかのサービスを見ながら、いいところだけをまとめてつくったサービスといえるでしょう。全体的にそつなくできている印象ですね」


 Google Play Musicのインターフェースで目につくのは「音楽アップロード」の項目ではないだろうか。自分のPC内の音楽データを5万曲まで無料でアップロードして、Google Play Musicで再生できる機能だ。また、それらの楽曲はGoogle Play Musicの楽曲とあわせてプレイリストに追加することもできる。


「インターフェースはとてもわかりやすく、操作もスムーズです。特に注文つけるところはないと思います。音楽アップロード機能はApple Musicにもありますが、AppleよりGoogleのほうがわかりやすい印象がありますね。5万曲が多いか少ないかは人それぞれで、私にとってはすこし少ないと感じますが、一般的なユーザーであれば十分なのでは。また、Googleのアカウントが使える端末であれば、PCでもスマートフォンでも、どこでもその5万曲を再生できるというのはかなり便利だと思います」


 また、現状Google Play Musicが他社よりリードしている点が2つあるという。


「Google Play Musicの記者会見に出席した際、日本の各レコードメーカーの責任者が登壇するなど全面的に協力していることをアピールしていました。日本のレコード各社はApple Musicに対してはやや警戒心を抱いているような気もするので、そういう点でGoogleはうまくやっているな、と。また、いろいろな機器で横断的に使えるという機能は他社より一歩リードしています。しかし、それもある程度時間が経ったら各社横並びになってくるでしょう」


 日本で音楽ストリーミングサービスがスタートして2~3カ月が経過した今、同氏は各サービスをどのように捉えているのだろうか。


「ヘビーユーザーとは言えませんが、仕事で音楽を聴く際にApple Musicを使っています。主に過去の作品を探して聴くツールとして使うので、私は配信楽曲と使い勝手で選んでいますね。現状どのサービスも基本的な機能で大差はないかと思います。ユーザーがサービスになにを求めるかによりますので、一概にどれが優れているということは言えないです。無料のお試し期間終了後となる今後の取り組みこそ、各社苦労していく点ではあるかと思います」


 優れた音楽サービスが生まれることで、音楽体験が豊かになる一方、ユーザーにとって不利益な事態が起こる可能性もあるのでは、と同氏は最後に付け加えた。


「個人的にはストリーミングサービスがあることによって、今まで聞いてこなかった音楽にふれるとてもいい機会ができたと思っています。今後、SpotifyやPandoraなどの海外サービスが日本にやってくる可能性もありますが、すべてのサービスが共存していくのはなかなか難しいのでは。いずれいくつかのサービスに淘汰されていったとき、聞き手にとって不利益な環境にはならないでほしいと思います。ふと気づいたらこのサービスでしか音楽が聴けない、CDが全然リリースされないなど。そういう状況が訪れることだけはごめんこうむりたいですね」


 音楽ストリーミングサービスに対し、独占市場としてではなく、ユーザーと音楽の接点、また音楽を楽しむ選択肢のひとつとして、音楽シーン全体を活況へ導く役割を求める声は少なくない。サービスの隆盛をきっかけに、人々の音楽への興味と関心が高まることこそが、実はもっとも重要なことなのかもしれない。(久蔵千恵)