日本で働く外国人は増加中だ。20年前には10万人足らずだったが、2014年は78万人を超えるまでになっている。今年8月には東京・新宿で外国人留学生のための合同面接会が開かれ、1000人近くの学生が集まった。
9月4日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)は、日本のベンチャー企業が外国人の採用を積極的に行うとともに、そこで働きたい外国人も増えている理由を紹介。そこには旧来の日本企業の問題点があぶり出されていた。
「大企業はルールに縛られる。日本で働くならスタートアップ」
東京・渋谷のトランスリミットは、2014年創業で従業員22人の小さな会社。世界150か国以上でダウンロードされている「Brain Dots」という言葉不要のスマホゲームをグローバルに手掛けている。
このゲームの運営を支えているのが、リトアニア人のアイステさん。アニメをきっかけに日本に興味を持ち、日本のデザイン学校に通いながら働いている。仕事はユーザーとのメール対応で、世界各国のユーザー1000万人以上をたった1人でさばく凄腕だ。
高場大樹社長は彼女の仕事ぶりを高く評価し、「めちゃくちゃ真面目で優秀ですね。『こんな感じでお願い』といえばそれ以上でやってくれるので、任せている」と絶賛。最近ではゲームのアイテムデザインも任せ始め、日本人にはない感覚が役立つという。
「海外向けサービスを作りたければ、海外人材は必要不可欠です」
アイステさんは日本のベンチャーで働く魅力を「幅広い仕事を任され、意見を取り入れてもらえること」と言い、流ちょうな日本語でこう明かす。
「(日本の)大企業だと、ルールに縛られるイメージ。特に外国人は考えや行動、しゃべり方も(日本人とは)違う。それを抑えるのはきつい。(日本で)就職するならスタートアップ(ベンチャー)がいいかなと思います」
資金調達の環境も整い「報酬は大手と遜色ない」
フェイスブックで人材をマッチングするウォンテッドリー(東京・白金台)では、海外からの日本ベンチャーへの応募が毎年5倍のペースで激増している。
同社のリザ・ヴェンティッグさんは人気の理由を、アニメなどポップカルチャーから入り日本文化に興味を持つと分析した上で、日本のベンチャーが外国人労働者と相性がいい理由について、こうコメントした。
「日本(の古い体質の)企業ではプロセスに時間がかかり、フラストレーションを感じる。ベンチャーは動きが速いので、外国人はその方がやりやすい」
外国人が働きやすいと人気のカブク(東京・渋谷)は、2013年創業の3Dプリンター関連の事業を手掛ける。ここで働くオーストラリア出身のピーター・ロジャースさんは投資銀行のアナリストや旅行会社の営業経験者で、海外案件の交渉役を一手に引き受ける。
報酬も大企業と比べて遜色なく、カブクの稲田雅彦社長は「いまのベンチャーは資金調達ができるので、大企業の水準と変わらない」と話した。
「自由な働き方」に対応できる度量が欠かせない
しかし優秀な外国人を雇うためには、お金さえあればいいわけではなく「自由な働き方」が必要だと稲田社長は明かす。カブクではカフェや自宅での仕事も認めており、ピーターさんも外国人の仕事への意識をこう語る。
「サービス残業は絶対にやりたくない。『自由な働き方』は外国人には当たり前のこと。そういう意味では大手より優秀な人が(ベンチャーに)集まる可能性は高いですね」
優秀な外国人にとって「サビ残当たり前」の中小零細企業も、「遅れず、休まず、働かず」の大企業も、魅力的に映らないのだろう。それ以外の働き方が、いまのベンチャー企業に生まれつつあるということだ。
結局、優秀な人材は劣悪な職場環境には集まらないし、育たない。旧来の日本的な働き方、働かせ方ではグローバル企業として通用しない。そのことを認識して、日本人全体の労働環境も改善してくれればと思う。(ライター:okei)
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