前戦スパに続くハイスピードバトルの予選。結果は、またもメルセデスのルイス・ハミルトンが制し、再び連続ポールポジション記録を更新。しかし、地元ティフォシの大声援を受けるフェラーリがメルセデスとの差を大幅に縮め、今季初めて2台揃ってトップ3に食い込む活躍をみせました。
メルセデスAMGは今回のイタリアGPに、年間で使用できる全てのトークンを使って改良した、新スペックのパワーユニットを投入。初日のフリー走行からフェラーリ以下にコンマ7秒以上もの大きなギャップを築くと、FP2のロングランでもレースでは1秒前後かあるいはそれ以上、ライバルよりも圧倒的に速いペースを示していました。
しかし、ハミルトンがポールポジションを獲得する一方で、フェラーリとのタイム差がかなり縮まったばかりか、チームメイトのニコ・ロズベルグにおいては新しいパワーユニットに不具合の兆候が見つかり、予選を前に中古のエンジンに交換する事態に発展しました。ロズベルグが使うこのエンジンは、すでに5回のレースウイークエンドで使われたもので、エンジンパワーが最も影響を及ぼす高速レイアウトのモンツァでは、ロズベルグの足かせとなってしまったことは本人も認めています。
また、初日はコンマ7秒以上あったハミルトンとフェラーリ勢のギャップは、予選でコンマ2秒台まで縮まりました。ハミルトンは、予選のアタックラップについて「いい出来だったけど完璧ではなかった」と語っていますが、3番手につけたセバスチャン・ベッテルも「レズモの1つ目で少しミスをした」とコメント。それぞれ失った分を見積もってもフェラーリのタイムの伸びしろが大きかったことが伺えます。
特に、フリー走行ではトップ3から若干後れを取っていたキミ・ライコネンがチームメイトも上回って2番手につけました。これには、2台が前後に並び後ろのマシンのトップスピードを引き上げるというモンツァ特有のスリップストリームを使った作戦をフェラーリがとったことも大きかったでしょう。最後のアタックでは後続のライコネンが先行するベッテルとの間隔を広げすぎた感もありましたが、最初のアタックではチームメイトのスリップストリームも十分に活かしたライコネンがファーストアタックから好タイムを記録。また、これと同じ作戦はウイリアムズでもとられ、チームメイトの後ろを走ったフェリペ・マッサが、ひとつ上の5番グリッドを獲得しています。
今回はフェラーリも3トークンを使用した新スペックのパワーユニットを搭載、トップスピードではメルセデスとほぼ互角の数値を記録しています。しかし、ハミルトンとフェラーリ勢のセクター毎のベストタイムでは、アスカリとパラボリカのある最終セクターでタイム差の半分以上に相当するコンマ1秒5のギャップが生じており、中高速コーナーにおけるマシンバランスの優位差は依然として存在しています。そのため、フェラーリとしてはメルセデスが若干苦手とするスタートで、揃ってハミルトンの前に立ち、ライコネンとベッテルの2台が協力する形で、最強のライバルに対抗したいところです。それが、メルセデスを攻略する最も有効かつ唯一の方法であると思います。スタートから逃げられてしまえば、跳ね馬に勝ち目は無いでしょう。
スタートさえきっちりと決めれば、ハミルトンの勝利は確約されたようなもの。あと怖いのはトラブルだけですが……ロズベルグのPUトラブルが、ハミルトンにも影響を及ぼしかねない状況になっています。メルセデスのボス、トト・ウォルフがトラブルの根本的な原因はまだ判明していなと認めており、「もし仮にハミルトンのPUに大きな問題が見つかり、彼のレースに危険が及ぶようならエンジン交換も当然検討する」と語っています。この問題がどう決着し、そしてどんな形でスタートを迎えるのか……。今回のメルセデスは、不安要素が“ゼロ”ではありません。
(その後、メルセデスはロズベルグのPUトラブルがクーリングシステムの漏れによる原因で、ユニット単体のものだったと説明、ハミルトンの新PUにゴーサインを出しました)
F1イタリアGPの決勝は、今夜21時(現地時間14時)スタートです。