成人した社会人が集まって働く職場では、従業員は組織目的の達成に向けて協力しあい、適切なコミュニケーションを取ることが求められています。しかし実態はどうでしょうか。大人げない幼稚な行為をしている人もいるのでは。
最近の米CareerBuilderの調査によると、いま米国の職場では小学校で起こるような「子どもじみた行動の増加」が見られるそうです。この件について8月20日付のCBSニュースでブルース・ケネディ氏がレポートしています。(文:夢野響子)
「同僚と備品共有を拒む社員」3割が目撃
管理職2500人以上と成人労働者3000人以上を対象にしたこの世論調査には、愚痴やふてくされ、かんしゃくのような未熟な行動が、米国の職場で頻繁に目撃されているという結果が出ているとのこと。
回答者の4分の3以上が、同僚間で「子どもじみた行動」を目撃しています。同僚の泣き言に遭遇した人は半数以上、物事が思い通りにいかなかった時に公然とふくれっ面をするのを見た人も半数近くいます。
4割以上が同僚についての陰口を目撃しており、就業中に人の背後で嫌な顔をする同僚を見た人も3割います。職場での排他的な派閥作りや、同僚の悪い噂をふざけて流すことに遭遇した人も3割います。
さらに、怒ってその場を放り出したり、作業中にかんしゃくを起こしたり、オフィスの備品を同僚と共有することを拒んだりするケースも3割が目撃しています。
職場の行動に関する学術研究によると、このような礼儀に反した行為は不快なだけでなく、伝染性があって悪性の風邪のようにオフィスに広がることが分かっているとか。誰かがひとり子どもじみた言動を取ることで、それが職場全体に広がるのです。
米アマゾン「上司へのメールで足の引っ張り合い」
この「職場での子どもじみた言動」の議論の引き金となったのが、8月15日付のニューヨークタイムズ紙に掲載された「Amazonの内部事情」という記事。そこではAmazonのブラック企業ぶりが語られ、こんなサブタイトルまで付いています。
「ホワイトカラーをどこまで追い詰められるかの実験をしている」
従業員には会議でお互いの意見を潰し合うことが期待され、深夜に返答を求めるメールが届くのは当たり前。社内の電話帳には、同僚への評価を上司に秘密裏に送る方法が記されています。それによってチームメンバーのランク付けがなされて最下位者は年末に解雇されるので、足の引っ張り合いにも使われているそうです。
記事では同社の雇用管理職のスーザン・ハーカー氏が、「当社は大きな革新を試みている企業。月に行く(くらい壮大な)ことを目指していれば、業務が大変なのは当たり前。誰にでも合う職場ではありません」と答えています。従業員や元従業員の中には、この体制だからこそ自分で思ってもみなかった高みへ上れたという人もいます。
「同僚のほとんどがデスクで泣く職場」で働きたいか
しかし誰にも否めないのは、多くの人が異口同音に証言している、職場で大の男が泣いているという事実。Amazonで過去2年間を耐えたボ・オルソン氏は「会議室から顔を覆って泣きながら出てきた同僚を覚えているし、一緒に働いた同僚のほとんどがデスクで泣いていた」と証言しています。
従業員がしばしばアスリートと呼ばれるほど限界に挑む人材が望まれ、「正しい決定に至るため」に妥協なくされる評価は、かなり直接的で痛みを伴うのでしょう。
Amazon社員が人前で泣く理由と、一般企業労働者の子どもっぽい行動の理由は全く同じではないかもしれませんが、それが周囲に与える影響は酷似しているでしょう。本当に情けない気分になる気がしますし、これが許されてしまうと何だか職場と小学校の教室の違いがなくなりそうで。
(参照)The rise of childish workplace behavior (CBS NEWS)
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