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F1イタリアGP金曜フリー走行分析:三つ巴の2番手争いに注目! メルセデスはやっぱり速い

2015年09月05日 16:41  AUTOSPORT web

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セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
今年も超高速決戦、イタリアGPが開幕致しました。舞台となるアウトドローモ・ナツィオナーレ・ディ・モンツァは、長い直線をコーナーで結んだようなレイアウト。ゆえに、前述のように超高速であると共に、サンマリノGP無き今、スクーデリア・フェラーリのお膝元とも言えるレースであります。

 そのイタリアGP、初日のフリー走行2回目(FP2)の結果を見る限り、今回もメルセデスAMGの2台が、圧倒的な速さを誇っているのは間違いないと思われます。

 ルイス・ハミルトン、ニコ・ロズベルグ共にソフトタイヤを履き、1分27秒台後半でロングランを始めると、そのペースをしばらくキープした後、ロズベルグは1分27秒074、ハミルトンは1分27秒219までペースを上げます。その後、ふたりは1分28秒台後半にペースを落とし、ハミルトンは10周、ロズベルグは17周、連続走行を行いました。1分28秒台に落としたロズベルグのペースを見る限り、タイヤのデグラデーション(タイヤの性能劣化によるペースの下落)の傾向はほとんど見られません。つまり、1分28秒台というこの時のロズベルグのペースは、かなりスピードを抑えた走行だった……そう見ることができます。

 ロズベルグはセッション終盤、ミディアムタイヤを履き、2周の連続走行を行います。そのタイムはいずれも1分27秒台後半。今回メルセデスAMGの次に速いロングランペースを持っていそうな3チームでさえ、ソフトタイヤでのロングラン時のペースは最速で1分28秒1~2。しかも明らかなデグラデーションの傾向を表しています。

 これらのデータから判断すると、今回のメルセデスAMGは1周につき1秒前後、場合によってはそれ以上、ライバルよりも速いと言うことが言えるでしょう。この差は実に圧倒的。当然、1発アタックも圧倒的ですから、前戦ベルギーGP同様に彼らが予選でフロントロウを独占し、スタートさえ失敗しなければ、レースでも独走する可能性が高そうです。

 メルセデスAMGは今回のイタリアGPに、年間で使用が許されている全トークンを使って改良した、新しいスペックのパワーユニットを投入し、メルセデスAMGの2台に搭載しています(メルセデス製パワーユニットのカスタマーユーザーであるウイリアムズ、フォース・インディア、ロータスには、新スペックのパワーユニットはまだ提供されていないようです)。この新スペックのパワーユニットは、「信頼性と燃費、効率を改善したモノである」とハミルトンが語っていますが、今回のFP2の結果はその性能をいかんなく発揮したもの……いや、まだその本来の性能のほんの一部しか見せていないのかもしれません。いずれにしても、メルセデスAMGが優勝候補最有力であると、言わざるを得ないでしょう。メルセデスAMGのふたりのドライバーも「ライバルはチームメイトのみ!」と読み取れるコメントを残しています。

 さて、今回の2番手チームは、FP2のタイム結果を見る限り、フェラーリとメルセデス製パワーユニットのカスタムユーザー3チームによって争われるように見えました。しかし、レースで重要となるロングランのペースを分析すると、ロータスを除く3チームの争いということになると思われます。

 ウイリアムズのバルテリ・ボッタスは、ソフトタイヤを履いて1分28秒台後半でロングランを始めると、ペースを上げながら8周を走行、1分28秒212までタイムを上げています。ただ、その後はデグラデーションの影響か、ガクリとペースを落としてしまい、連続走行終盤には1分29秒台まで下落しています。計算上、1周あたりのデグラデーションは0.142秒。グランプリ初日のウイリアムズは、燃料をかなり多めに積んでいる傾向があるため、もう少し速く走ることができる可能性があるとはいえ、“速さはあるものの若干安定性に欠ける”という印象です。なお、ボッタスのチームメイト、フェリペ・マッサはミディアムタイヤを履いて連続走行。この時のペースは、ボッタスよりも1周あたり0.5秒程度、遅いモノでした。

 一方フェラーリは実に高い安定性を発揮しています。彼らはキミ・ライコネンにソフト、セバスチャン・ベッテルにミディアムを履かせて連続走行を行いました。この時、ライコネンは前述のボッタスと同程度のペースで走行を開始しています。しかし、ペースの下落幅はウイリアムズに比べると非常に小さく、1周あたり0.039秒というところ。つまり周回数を重ねるに連れ、フェラーリの優位性が増して行くということになるでしょう。ミディアムを履いたベッテルのペースも実に安定しており、ソフト装着のライコネンに若干遅れるという程度。ウイリアムズとは逆に、初日のフェラーリは燃料が軽いことが多いですが、それでもその安定性を見る限り、2番手チーム最有力はフェラーリであると申し上げていいでしょう。

 フェラーリとウイリアムズの争いに割って入ってきそうなのが、フォース・インディアです。ニコ・ヒュルケンベルグはFP2で43周もの走り込みを行い、ソフトタイヤで20周、ミディアムタイヤで13周の連続走行を実施しています。そのうち、特にミディアムタイヤでのペースが優秀でした。ヒュルケンベルグは13周のうち10周を、1分28秒台で走行し、デグラデーションの傾向もほとんど見られません。前戦ベルギーの決勝では、セルジオ・ペレスが上位を争いましたが、デグラデーションが大きく、徐々に脱落していきました。それと比較すると、格段に高い安定性を確保したように見えます。しかも、ソフトタイヤでの連続走行時には、ヒュルケンベルグはかなり多くの燃料を積載していたと推定できる。つまりフォース・インディアは、完全にレースを想定した走行を行っていたとも考えられます。一発のアタックもしっかりとまとめており、フェラーリとウイリアムズを凌駕し、メルセデスAMGに次ぐ2番手に浮上したとしても、決して不思議ではありません。

 メルセデス製パワーユニットを使うもう1チーム、ロータスの実力は非常に読み辛いところ。タイムシート上ではロマン・グロージャンが7番手、パストール・マルドナドが8番手につけており、上位争いに加わってきそうに思えるのですが、ロングランのペースは実に悪く、前述のチームと争うのは難しそうに見えます。ただ、そう単純に判断してよいモノなのかどうか……土曜日の走行結果を注視する必要があるかもしれません。

 安定性という意味では、トロロッソにも触れておきたいところ。カルロス・サインツJr.はタイムシート上で15番手にとどまっているものの、FP2だけでなんと50周も走行。セッション終盤にはソフトタイヤで20周の連続走行を行っています。ペース自体はフェラーリ、ウイリアムズ、フォース・インディアには及びませんが、それでもデグラデーションは小さく、ポイント争いには加わってきそうです。レッドブルの2台は、ほとんどアタックは行わず、ロングランのみに終始していた印象。ダニール・クビアトなど、走行1周目からロングランを行っており、決勝に向けどのようなプランを立てているのか、実に興味深いです。ザウバーとマクラーレンは、初日の結果から判断する限りでは、他のチームと争うのは厳しいと言わざるを得ないでしょう。

 メルセデスAMGの速さが、これまでにも増して圧倒的に見えるイタリアGP。しかし、フェラーリ、ウイリアムズ、そしてフォース・インディアによる2番手チームの争いは実に熾烈……そんな状況に見えました。さて、その結末やいかに?

(F1速報)