F1イタリアGP直前にフォース・インディアがニコ・ヒュルケンベルグの残留を発表し、ウイリアムズも2人のドライバーと契約を更新。まだ発表はないが、レッドブルとトロロッソもラインナップを継続することは、間違いないと見られている。
そうなると、残る注目のシートはフォース・インディアのもう1つと、ロータスの2つである。しかし、ここに来て、マクラーレンの1つのシートを巡って、さまざまなウワサが広がっている。それは、ジェンソン・バトンのシートだ。
バトンのマネージャーを務めるリチャード・ゴダードは「マクラーレンとの契約は2年あるので、こちらから移籍することは考えていない」と語りつつも、「この世界では何があるかわからない」と、シート喪失のウワサがあることを否定しなかった。問題は高すぎる契約金である。
今年のバトンの年俸は1000万ユーロ(約13億3200万円)。これは6番目に高い。しかし、バトンはチャンピオンのひとりであり、ほかのチャンピオンたちと比べると、年俸は決して高くはない。まだタイトルを手にしていないニコ・ロズベルグよりも約5億円安いくらいだ。
では、なぜマクラーレンはバトンとの契約を望んでいないのだろうか。それはバトンとの1000万ユーロの契約は今年限りで、2016年は大幅にアップするからである。マクラーレンは昨年、最後までフェルナンド・アロンソのチームメイトとなるドライバーを決められずにいた。最終的に彼らがバトンと契約したのは12月。そのとき、バトンは2014年にもらっていた2171万ドル(約26億円)の年俸を半分にしてでもマクラーレン残留を希望。ただし、それは1年だけで、2年目には元の水準に戻るという約束をマクラーレンとかわしていた。
マクラーレン側がバトンの残留に難色を示しているのは、バトンだけの年俸が理由ではない。もうひとりのドライバーが、現在のF1界で最高額の年俸をもらっていることも大きく影響している。その額はバトンの約3倍となる3500万ユーロ(約46億2000万円)。もし、2人が残留した場合、その年俸の合計金額は70億円にものぼる。
マグヌッセンがレースドライバーだった2014年にマクラーレンからどれほどの年俸をもらっていたのかは不明だが、ある情報によれば、「100万ユーロ(約1億3200万円)」という。現在GP2でランキング首位を独走するマクラーレンの育成ドライバーであるストフェル・バンドーンを選択すれば、年俸はさらに安くできるだろう。
今年、レースに出場しなくなったマグヌッセンは、リザーブドライバーとしてチームに帯同しなければならないが、彼のマネージャーにその必要はない。しかし、今シーズン、マグヌッセンのマネージャーはゴダードよりも頻繁にサーキットに足を運んでいる。
バトン、マグヌッセン、バンドーンの3人の中でだれがチームメイトとして最適かと尋ねられたアロンソも、マクラーレンが来年のラインナップで悩んでいることを認めていた。
「僕はだれでもいい。大切なことは、チームにとって、だれがもっともメリットがあるのかだね」
(尾張正博)