F1イタリアGP初日は、多くのチームが新しいパワーユニットを降ろしてきた。1基のパワーユニットは6つのコンポーネントで構成されており、20人すべてのコンポーネントの合計は120となる。果たして、今回新しいものに交換されたコンポーネント数は金曜日の段階で64。つまり、半分以上のコンポーネントが新品に交換されたわけである。それだけ、モンツァはパワーユニットに厳しいだけでなく、性能差がパフォーマンスに与える影響が大きいことを示している。
そのモンツァで、金曜日にまったくコンポーネントを変えなかったのは3人。フォース・インディアのニコ・ヒュルケンベルグとザウバーの2人だ。その次に少なかったのが、マノー・マルシャのロベルト・メリとマクラーレン・ホンダの2人で、新しく入れたのは1つのコンポーネントだけだった。そして、今回ホンダが新しくしたのが、ICEである。このICEはベルギーGPで3つのトークンを使用したマーク3と同型である。これはホンダにとって9基目のICEとなり、すでにターボチャージャー(TC)とMGU-Hを9基目にしているバトンは5番手降格だけで済むが、今回が初めての9基目投入となったアロンソは10番手降格となる。
ところが、その降ろしたてのマーク3のICEを、1回目のフリー走行中にホンダは車体から切り離す。しかし、ホンダの現場責任者的存在である中村聡チーフエンジニア(ホンダR&Dヨーロッパ)は「すべて、予定通り。いくつか改良した部分をチェックしたかった」と説明する。
同じマーク3でも、スパ・フランコルシャンに投入された2基(7基目と8基目)と、今回の9基目では細かな部分が違うという。現在のパワーユニットはシーズン中の改良はトークンを使用しなければできないが、信頼性に関する部分についてはFIAに申請し、許可されれば改良できる。だが、改良はそれ以外にも、まだ可能なのである。トークンを使用しなければ改良できない項目があるということは、それ以外は自由だということだ。例えば、ハーネスの長さを変えたり、束ねたりすることでも性能を向上させることはできる。
つまり、同じマーク3のICEでもスパで使用した7基目と8基目がマーク3のバージョン1だとしたら、モンツァのマーク3はバージョン2ということができる。そして、そのマーク3バージョン2はアロンソが11周、バトンが12周した後に車体から降ろされたのである。テレビ中継を見ていた人は、アロンソが「パワーがない」と無線で語った後に、交換作業が始まったため、何か問題があったのではないかと心配した方もいたようだが、すべてスケジュール通りだったのだ。
ちなみに午後のフリー走行2回目に向けて交換されたパワーユニットは、中村エンジニアによれば、「ハンガリーGPで使用したスペック」で、「土曜日に向けて、スパでレースに使用したものに再び交換される」という。
ということは、ホンダはスパで降ろしたマーク3のバージョン1が1基とモンツァで降ろしたマーク3のバージョン2が1基の合計2基のICEをストックしたこととなり、ペナルティなしでほぼフレッシュな状態で使用できる準備を済ませたことになる。そして、そのうち、最新使用のバージョン2をどこに使うのか。後半戦でもっともチャンスがあると考えられる次戦シンガポールGPに投入するのか。それとも、ホンダにとって7年ぶりの母国グランプリとなる鈴鹿で投入するのか。
いずれにしても、ホンダにとってのイタリアGP初日は、フリー走行2回目のバトンに発生したウォーターリーク以外は、順調な一日だった。
(尾張正博)