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『るみちゃんの事象』主演で新境地 トミタ栞の持つサブカル的面白さを紐解く

2015年09月04日 22:11  リアルサウンド

リアルサウンド

トミタ栞

 7月より放映されているMBS・TBS系の深夜ドラマ『るみちゃんの事象』が、じわじわ人気を集めている。本作は『ビッグコミックスピリッツ』で連載中のコミックの実写化。主人公・郁野るみが繰り広げる破天荒な毎日を描くコメディだ。主演を務めるのはアーティストのトミタ栞。ドラマ初出演でしかも初主演という異例の大抜擢ながら、真顔でボケる、テンションの高いヘン顔など、原作どおりの“るみちゃん”に体当たりで挑戦。歌手としてだけではない、新たな魅力を開花させている。


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 木村カエラを輩出した音楽情報バラエティ番組『saku saku』の5代目MCとしてデビューしたトミタ栞。当時、番組内でもたびたびその天然発言が話題となっていただけに、今回の“るみちゃん”というエキセントリックな女子高生役を、ハマり役と感じるファンも多いよう。加えてトレードマークのぱっつん前髪が奇しくもキャラクターと一致。トミタ自身の存在感と相まって、まるで“るみちゃん”がマンガの中から飛び出してきたような印象を与える。


 そして、それは劇中だけでなく、主題歌にもなっている『17歳の歌』にも表れている。本作はトミタが「るみちゃん★○トミタ栞」(読み方:ルミチャン スター リング トミタシオリ)名義でリリースした新曲で、歌詞を原作者の原克玄が書き、トミタが作曲を手がけた。テンポの早い、ド直球な青春ロックは、ドラマの世界観や勢いそのもの。「雨が止んだら虹をかけよう 恋する気持ちにカレーをかけよう」や、サビの「ひざ こし くるぶし こめかみ はな ほね」など、一度聴いたら忘れられない意味不明で強烈な歌詞も中毒性高し。ミュージックビデオでは飛び跳ねながら熱唱するトミタ、もとい“るみちゃん”のポジティブパワーが炸裂している。


 2013年から歌手活動をスタートさせ、気鋭の女性アーティストとして若い世代を中心に支持を集めてきた彼女だが、もとよりその存在感は、サブカル的な面白さに起因している部分も大きい。まず、キャリアのスタートが『saku saku』という人気ローカル番組のMCだったこと、そしてファッション感度の高いユーザーの多いIntagramで開設1週間足らずにして3,000人を超えるフォロワーを持っていること、そして極めつけが今回のコミック実写化におけるドラマ主演。音楽性やビジュアルはもちろんのこと、彼女本人の持つ個性や愛らしさを全面に出した展開が功を奏している。一見どこにでもいそうに見えて、なかなかいない、掘り出し物的な佇まいは、新しもの好きの若者やアンテナを広く貼ったカルチャー好き層にはうってつけ。音楽だけ、可愛さだけ、ではなくトミタ栞本人を広くアピールしてこそ、彼女の魅力は広く認知されていくと思うのだ。


 そういう意味でも今回のドラマ主演は、彼女にとっても大きな転機となったはず。奇想天外なキャラクターを演じることで、本人にも少なからずそのイメージが付与され、新たなファンを獲得できたのではなかろうか。音楽、ファッション、テレビ、SNSと現代のカルチャーシーンを縦横無尽に突き進むトミタから、今後のさらなる快進撃の予感がする。(板橋不死子)