9月3日、ピレリはベルギーGPで発生したタイヤバーストに関する調査報告を発表した。それによれば「おもな原因はデブリ(破片)で、週末を通して使用されたタイヤを調査した結果、合計63のカットが発見された」という。
セバスチャン・ベッテルのバーストについて、ピレリは当初「1ストップ戦略による摩耗が原因ではないか」と語っていたが、バーストしたタイヤを調べた結果、ベッテルのタイヤのトレッドには、まだ30%の厚さが残されていたため、原因はベルギーGP金曜日に発生したニコ・ロズベルグのバースト同様、外的要因、つまりデブリによるカットという説が有力となった。ピレリの発表を受けて、FIAも以下のような声明を出した。
・レース中にカットされたすべてのタイヤを検査した結果、それらのタイヤにデラミネーション(剥離)の兆候は見られなかった。
・レースで使用されたタイヤを、レース後にテスト装置で走らせ、レースと同様の負荷をかけたが、デラミネーションの兆候は見られなかった。
・ピレリのエンジニアから、ベルギーGPでは異常なほど多くのカットがあったという報告を受けた。そのうち1件は内部のベルトにまで達し、ロズベルグのタイヤバーストを引き起こした。
・カットが発見されたタイヤの中から、いくつかのタイヤをさらにくわしく調べた結果、他にも1件、ベルトまで達しているカットが発見されたが、そのタイヤはバーストには及ばなかった。
・バーストしたベッテルのリヤタイヤには30%のトレッド厚が残されていたが、その状態では小さなデブリであってもダメージを受けやすかった。
つまり、ピレリもFIAも「タイヤそのものに問題はなかった」という結論を導き出したのだ。ところが木曜日には、各チームのテクニカルディレクター級エンジニアとピレリとの会合が持たれていた。議題となったのは、タイヤの空気圧とキャンバーについて。詳細は明らかにされていないが、関係者からの情報によれば、イタリアGPでは内圧が上げられるという。
ベルギーGPでの内圧はフロントが20PSI(ポンド/平方インチ)でリヤが18.5PSIだったが、イタリアGPではフロントを2PSI上げて22PSI、リヤは2.5PSI上げて21PSIにするという。内圧の絶対値については明言しなかったものの、ルイス・ハミルトンも木曜日の会見で「5PSIぐらい内圧を上げることになるかもしれない」と語っており、モンツァでタイヤの使用法に関する話し合いが行われたことは間違いない。
そうなるとピレリとFIAが出した調査報告書には疑問が残る。もしタイヤに欠陥がなかったのなら、なぜイタリアGPから内圧を変更するのか。ピレリはバーストが頻発した2013年イギリスGPでも「タイヤに問題はなく、チームの使用状況が適正範囲外だった」という旨の結論を出したにもかかわらず、イギリスGP以降にタイヤのスペックを変更している。このとき、あるチームのエンジニアは「チームの使い方に問題の原因があったなら、使い方を統制すれば済むはずではないか」とピレリの対応に不信感を見せていた。
内圧を上げようが、キャンバーを変更しようが、ドライバーが安全に走行するための対策であれば、喜んで歓迎する。だからピレリには、なぜタイヤの使用方法を変更するのか、ぜひ説明してもらいたい。
(尾張正博)