9月2日の「おはよう日本」(NHK総合)は、オフィスに小さな子どもを連れてくる「子連れ出勤」が増えているという話題を取り上げていました。現在、子育てなどで働きたくても働けない女性は101万人。企業側はこの状況を、こう残念がっています。
「日本の主婦は高学歴者が多い。働かないのはもったいなさすぎる」
最近では企業内保育も増えてきていますが、保育士を常駐させると高いコストがかかるため、特に人手不足に悩む中小企業の間では「子連れ出勤」に注目が集まっているそうです。
様々なキャリアを持つ女性たちが集まるように
東京・目黒区にあるカタログギフトの企画販売会社ソウ・エクスペリエンスでは、従業員30人のうち9人が子連れ出勤。きっかけは2年前、出産で5人が職場を離れ、深刻な人手不足になったことです。
早期職場復帰のために子連れ出勤を解禁しましたが、子どもが書類で遊んだりパソコンの電源を押したりと問題が続出。そこで仕事への影響を避けるため、子どもが安全に遊べる専用スペースを設置しました。
さらに、子どもの声が届かない別室を設け、取引先への電話や重要な書類をつくる場所としました。子連れ出勤している女性たちからは「勤務時間中に子どもの面倒を見るため、負い目を感じる」という声があがり、育児している時間分を給料から差し引くというルールも作っています。
子連れ出勤が軌道に乗るようになって、会社には思わぬ効果がありました。様々なキャリアを持つ女性たちが集まってくるようになったのです。大手飲食チェーンで商品開発や宣伝の企画を担当していたMさん(32歳)もそのひとり。
3年前に長女を出産しましたが、保育園に入れられなかったため仕事復帰に10年かかると諦めていたそう。「そう考えると働くことを続けていられるのは、とても幸せなこと」とMさんは語ります。子連れ出勤を認めてからの新規採用は5人。会社の業績も伸びています。
平均を下回る時給でも応募者が殺到
番組では、オフィスと育児スペースを隣接させて子連れ出勤を積極的に行っている企業「ママスクエア」も紹介されました。働くのは全て子育て中の女性たちで、大手企業から事務や営業などの仕事を請け負っています。
育児スペースには数名の保育者が常駐しており、勤務の合間にガラスの壁で仕切られた育児スペースをのぞいてわが子の様子を見ることもできます。
そのほかにも子どもの体調や学校行事などに合わせて、急な休みや短時間勤務も認められており、全体的に働きやすい職場になっています。
電話オペレーションは慢性的な人手不足で、平均時給は1200円を超えていますが、この会社では900円で募集しても10倍の応募があるとのこと。今後は首都圏を中心に事業所を6か所増やす予定で、事業は急拡大しています。代表取締役の藤代聡さんはこう語ります。
「採用する側も、この年齢層の子どもを持つお母さんを狙ってこなかった。この仕組みなら、いろんな人たちが働いていける」
待遇面の抑制はぜひ最小限にしていただきたい
子連れ出勤という言葉を聞いて、反射的に「無理だ」「嫌だ」「迷惑だ」と思う人もいるでしょう。しかし子連れで働きたい人がいて、そういう人を雇って業績を上げている個別の成功例が増えていくことは、とても素晴らしいと思いました。
働けない不満を抱きながら鬱々と子どもと過ごす人や、子どもが欲しいけれど仕事を続けたいから諦める人が少しでも減ると思うからです。
気になるのは、子どもにかまっている分の給与を減らすとか平均時給以下でも人が集まるという部分。もちろん別のコストも余計に掛かるのでしょうが、業績が上がっているなら待遇面での抑制は最小限にしていただきたい。そのあたりはまだまだ周囲の目を気にして、遠慮する母親の弱い立場を感じます。(文・篠原みつき)
あわせてよみたい:親が育児に消極的だと攻撃的な子どもに育つ