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AKB48、きゃりー、Shiggy Jr.、VAMPS…ハロウィンソングが急増している背景とは?

2015年09月03日 18:11  リアルサウンド

リアルサウンド

AKB48『ハロウィン・ナイト-Type-A』

 AKB48が、8月26日に41thシングル『ハロウィン・ナイト』をリリースした。同作の表題曲は『41thシングル選抜総選挙』で1位を獲得した指原莉乃がセンターを務める楽曲で、作編曲を井上ヨシマサが務めているもの。タイトルに「ハロウィン」を冠しているように、メンバーが様々なコスプレをしており、日本の80年代ディスコ歌謡にあわせ、パパイヤ鈴木が振り付けたダンスを歌い踊る楽曲だ。


 ほかにも、9月2日にはきゃりーぱみゅぱみゅが新シングル『Crazy Party Night ~ぱんぷきんの逆襲~』をリリースしており、きゃりーは同曲が生まれた理由について「いまハロウィンがすごい盛り上がってる。街を歩いていてもコスプレの人が多くなったし、中田(ヤスタカ)さんと『ハロウィンソングを作ろう』と相談した」と明かしている。(参考:http://realsound.jp/2015/08/post-4392.html)。


 これら、ポップミュージックシーンの先頭を走る2組が、同時にハロウィンソングを制作したのはなぜだろうか。その背景には、日本の、とくに若年層における“ハロウィン”の価値観が変わってきたことがあるだろう。一説によると、東京ディズニーランドが1997年より『ディズニー・ハロウィーン』を開催し続け、2000年代後半からは関連商品も数多く登場し、秋の行事として認識されていったことが、ハロウィンの定着を後押ししたとされている(参考:http://thepage.jp/detail/20130930-00000006-wordleaf?page=1)。さらに、2006年には江崎グリコ、2007年にはロッテ、2008年には森永製菓と、製菓メーカーが次々にハロウィンのパッケージの菓子類を販売し、主婦層とその子供たちにも広く伝わった。また、00年代の『コミックマーケット』通称“コミケ”が、コスプレイベントとしての側面を持っていることがマスメディアに大きく取り上げられる中、テーマパークのハロウィンイベントが“コスプレ必須”になったことも影響し、「ハロウィン=コスプレをするもの」という一つの価値観が定着したという。


 その盛り上がりは2010年代になるとさらに加速。10月末になると、各クラブやイベント会場では“コスプレ割引”なるものが登場し、ハロウィン当日には渋谷の街をコスプレした若者が闊歩するという状況が生まれ始めた。そして、2014年には渋谷のスクランブル交差点が、大勢の仮装した若者によって混乱状態となり、機動隊が200人出動する事態にまで発展。こうした一連の流れを受けて、きゃりーとAKB48は早々にハロウィンソングをリリースしたのだろう。当日のBGMとして、彼女らの楽曲が求められることは想像に難くない。


 そして、この“祭り”に乗るのは、なにもポップミュージックシーンのトップを走るものだけではない。ブレイク有望株の若手バンドShiggy Jr.は、10月14日にシングル『GHOST PARTY』をリリース予定。こちらは不穏なシンセベースの効いた四つ打ちサウンドに、アイドルポップスにも近い雑多な盛り上がりを随所に組み込んだ“Shiggy Jr.流ハロウィンソング”で、バンドシーンの若手にもハロウィン文化が浸透していることを感じさせる一曲だ。ちなみに、バンド界のハロウィンソングといえば、VAMPSが主宰するハロウィンライヴイベント『HALLOWEEN PARTY 2012』に合わせて結成されたHALLOWEEN JUNKY ORCHESTRAの「HALLOWEEN PARTY」が有名だ。2005年から同ライブイベントを開催していたHYDEは、さすがに先見の明があるといえる。さらにHYDEは今年、日本アカデミー賞新人俳優賞を史上最年少で受賞した、大注目の子役・渡邉このみを含む小学生ユニット・HALLOWEEN DOLLSを結成。自身でプロデュースを手掛けた「HALLOWEEN PARTY」のカバーを収録した同タイトルのシングルを10月7日にリリース予定だ。


 ちなみに今年は、10月25日より六本木で国内最大級のハロウィンイベント『ROPPONGI HALLOWEEN』が開催されるほか、10月31日には東京・日本武道館で『日テレ HALLOWEEN LIVE 2015』が行われる予定。ほかにも各地のライブハウスやクラブでは、続々とハロウィンイベントが催されているようだ。大物グループもハロウィンソングをリリースし、音楽業界も一丸となって盛り上げはじめたハロウィンシーズン。ゆくゆくはアメリカのように大きな経済効果を生み出すイベントになるのかもしれない。(松下博夫)