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ポルノグラフィティ、新作のチャートアクションに見る“清々しい大衆性”とは?

2015年09月02日 23:31  リアルサウンド

リアルサウンド

ポルノグラフィティ『RHINOCEROS(初回生産限定盤)』

 初登場作品が8枚もランクインしている今週のアルバムチャートだが、首位は再び返り咲きでドリカム。とにかく、ひたすら、強いです。翻って8位と9位にはAqua Timezのベストが2枚入っているが、それぞれ7,000枚程度のセールス。10周年だからベストというのは結構だが、やっぱりベスト盤は一枚にするのがいいのではないだろうか。それがドリカムのように3枚組50曲というボリュームであっても、ひとつの渾身のパッケージこそを「ベスト」と呼びたいのだ。
 
 ちなみに今週は10位圏内の8枚が新着作品だが、前週から残っているのはドリカム以外でポルノグラフィティのみ。先週1位だった新作『RHINOCEROS』は、今週のセールスと合わせれば5万枚を突破したことになる。この数字で「国民的人気」と言うのは乱暴だが、今のヒットの基準を考えれば十分に「大健闘」。この感じがとてもポルノらしいと思う。


 サザンやドリカムやミスチルほどの人気や認知度はない。だけど毎年それなりのヒットが続いている。安定しているのに17年目の現在も“余裕”という言葉が似合わない。たとえば、ゆずほど“善良”なイメージも、B'zほど“ロック”なイメージも未だになく、岡野昭仁と新藤晴一は、ポップスという広い世界で「なんだかずっと健闘している」二人という感じがする。


 かつて近田春夫氏が「ポルノグラフィティをテレビで見ると、歌のうまい中居くん、というふうに思ってしまう」と書いていて、思わず膝を打ったことがある。ファンに怒られるかもしれないが(…どっちの?)、私もそう思う。顔というより雰囲気が近いのだ。


 「自分、シンガーでアーティストですから」という自意識が薄いのか、あるいはバラエティでうまく立ち回れそうな明るさと滑舌の良さが際立つからか。実際のトークはよく噛むらしいが、歌っている時の岡野は、イケメンキャラではないが非常に好感度の高いタレントに見えることがある。貶しているつもりはまったくないですよ。自分語りに忙しいSSWとか、深刻ぶって深淵な音楽に向かっていくロックバンドの自己愛に比べて、ポルノの放つ「大衆性」のなんと清々しいことか。あくまでマスに向けたバラエティを意識しつつ、ヘンに大御所ぶることなく、ウケりゃいいんだと開き直ることもなく、聴けば「あぁ、ポルノだ」とわかる曲ばかりを量産してきた彼ら。これは誰にでもできることではない。


 最新作も、まさしくバラエティに富みまくった内容。シングル曲の「Ohhh!!! HANABI」もよく聴けばソカっぽいリズムが入ってくるし、昔からお得意のラテン風、最新のEDMっぽい曲、ロックにカントリー、驚きのラップ調などなどお楽しみはたっぷり。しかし、あくまで「~調」であり「~っぽい」アプローチなのだ。マニアックぶらず、ツウぶったりもしない。いろんなフレーバーを手繰り寄せながら、結局ポルノグラフィティらしい曲、大衆性を備えた歌謡曲に落とし込んでいく彼らの手腕は、今の時代、とても貴重だという気がする。(石井恵梨子)