企業のトップであるCEO(最高経営責任者)といえば、日本では数年間の任期中はよほどのことがない限り変わらないイメージがある。しかし中国企業のファーウェイ(華為技術)では、半年毎にCEOを交代させる「輪番制」を採っているという。
ファーウェイは世界最大の通信機器サプライヤーのひとつといわれ、徐直軍氏(エリック・シュー)、郭平氏(グォ・ピン)、胡厚崑氏(ケン・フー)の3人を輪番CEOに選出している。2015年4月1日から9月30日までは、シュー氏がCEOを務める。
3人の「頭脳明晰な人たち」に権限を集中させる
ファーウェイは1987年、任正非氏(レン・ジェンフェイ)が中国・深センに設立した民営企業。通信機器の開発・製造・販売を手掛け、2010年に米ビジネス誌Fast Companyが発表した「世界で最も革新的な企業ランキング」で5位となっている。
CEOの輪番制は、ジェンフェイ氏が2011年に導入を発表。ファーウェイ・ジャパン広報誌「HuaWave」によると、輪番制は「社会の急速な変化に十分に対応するための方法」として考え出されたようだ。
ジェンフェイ氏は、従来の株主資本主義における取締役会は保守的になる傾向があると指摘。技術のダイナミズムと市場の変動性を考慮し、少人数の経営者が交代でCEOの職務を引き受ける制度を採用することにした。
1人のCEOが「いくつもの業務を処理し、深い洞察力を備え、正しい方向づけをする」よりも、「複数のCEOがそれを輪番で受け持つほうが効果的」だと語り、
「輪番CEOを務める資格を複数の『頭脳明晰』な人たちに与えることで、CEOは世界の絶え間ない変化にさらされながら、特定の枠内で意思決定を下せるようになります」
と指摘している。
相互けん制により「お友だち内閣」を避ける効果も
また、複数の輪番CEOを置くことで、相互けん制の効果も狙っているようだ。任期を終えたCEOは引き続き会社の意思決定機構の中核的メンバ一としてとどまることで、「頑固な1人の人間のために会社が硬直化する」ことや「予想外のリスクのために事業が不安定化すること」を回避する。
各CEOの就任期間中でも、経営幹部の任命はトップ経営陣の集団的意思決定に基づいて行われるため、不当な人事も防ぐことができる。
「こうした制度を採用すれば、中国のことわざ『どの皇帝も自分のお気に入りを集めて内閣を作る』という言葉で表されるような状況を回避できます」
任氏はメッセージの最後に、「私はCEO輪番制度こそが当社の持続的な成長を支え、成功へ導く効果的な処方と考えます。たとえ期待通りの結果が生まれなくても、新しい試みに挑戦したことに悔いはありません」と語っている。
白物家電のハイアールもナンバー2で採用
同社は現在右肩上がりの成長を続けており、2015年度上半期も対前年同期比30%増となる1759億元(約3兆4705億円)の売上高を達成し、営業利益率も18%に達したという。
中国企業では白物家電で世界トップシェアを誇る海爾集団(ハイアール)も、2013年よりナンバー2の役職である総裁職を2人が交代で務める輪番制にしたと報じられている。
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