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EXILEと福山雅治のチャートアクションに見る、「一族」と「ソロ」の方向性の違いとは?

2015年09月01日 09:11  リアルサウンド

リアルサウンド

EXILE『24karats GOLD SOUL』

 今週のオリコンシングルランキングは、1位に福山雅治『I am a HERO』、2位にモーニング娘。’15『Oh my wish!/スカッとMy Heart/今すぐ飛び込む勇気』、3位にEXILE『24karats GOLD SOUL』、4位にBTOB『夏色 MY GIRL』、5位にSUPER☆GiRLS『イッチャって♪ ヤッチャって♪』という並びとなった。(参考:2015年08月17日~2015年08月23日のCDシングル週間ランキング(2015年08月31日付)(ORICON STYLE))


(関連:EXILEの“成り上がり”を支える、リーダーHIROの物語プロデュース力


 福山雅治のシングルは約2年4カ月ぶりのリリース。今年3月にデビュー25周年を迎えた彼による「25周年記念シングル」が15.8万枚のセールスを実現し、通算17作目のシングル1位となった。男性ソロアーティストの「シングル1位獲得作品数」でも、2位の近藤真彦、3位の田原俊彦を抑えて歴代単独トップとなっている。


 この『I am a HERO』が特徴的なのは、ドラマ『花咲舞が黙ってない』主題歌の表題曲を含むシングル収録全5曲がタイアップ曲であるということ。カップリングには、アサヒスーパードライCMソング「ステージの魔物」、キューピーマヨネーズ90周年CMソング「その笑顔が見たい」、資生堂TSUBAKI CMソング「何度でも花が咲くように私を生きよう」、映画『アリのままでいたい』主題歌「蜜柑色の夏休み 2015」が収録されている。


 ハッキリ言って、どれも大きなタイアップである。特にナショナルクライアントのCMソングとなった3曲は、どれもかなりのテレビ露出を獲得している。アサヒスーパードライでも、資生堂TSUBAKIでも、キューピーマヨネーズでも、本人が出演して歌っている。曲単体としても、パワフルなロックサウンドの「ステージの魔物」、フォーキーな「その笑顔が見たい」、壮大なバラードの「何度でも花が咲くように私を生きよう」と、どれもクオリティが高くシンガーソングライターとしての福山雅治の才能をいかんなく発揮しているできばえだ。


 そして、すでに配信限定でリリースされているものもあるが、名実ともにシングル表題曲として充分に通用するパワーを持った曲をあえてカップリングとして収録し「約2年4カ月ぶりのシングル」としてリリースしていることに、今の福山雅治の戦略を読み解くこともできる。


 これらの4曲をすべてカップリングに収録したパッケージングは、「両A面シングル」が一般的になり、今週2位のモーニング娘。’15『Oh my wish!/スカッとMy Heart/今すぐ飛び込む勇気』のように「トリプルA面シングル」も増え、Mr.Children『四次元 Four Dimensions』のように収録4曲が全てタイアップ曲の「クアトロA面シングル」すらリリースされるようになった昨今の潮流から、さらにもう一歩踏み込んだものと言える。つまり、5曲を収録しミニアルバム的なボリュームを持たせることでシングルの価値を高める方法をとっていると言えるわけだ。


 一方、3位となったEXILE『24karats GOLD SOUL』は9.0万枚のセールス。こちらは、世代交代が進むEXILE一族の中での「本体」のあり方を改めて築き直すような試みの見えるシングルとなっている。作曲を手掛けたのはSTY。昨年の大ヒット『R.Y.U.S.E.I.』をMaozonと共に手掛け、三代目 J Soul Brothersの本格的な人気拡大の決め手となったクリエイターだ。


 今年になり、三代目JSBはアルバム『PLANET SEVEN』がオリコン「2015年上半期ランキング」の1位となり、まさに天下を取った形となった。さらに7月にはSTYが世界的なEDMプロデューサーのAFROJACKと共に手掛けた「SUMMER MADNESS」をヒットさせている。


 ニューシングルの『24karats GOLD SOUL』も、このSTYが作詞と作曲を手掛けたナンバー。彼は過去に「24karats-type EX-」(2007年)、「24karats STAY GOLD」(2010年)というEXILEの楽曲に携わってきたわけだが、タイトルからも明らかな通り、その続編的な内容となっている。実際、「24karats STAY GOLD」と「24karats GOLD SOUL」はかなり共通項の多いサウンドだ。バウンシーなブレイクビーツを駆使したマッチョなヒップホップで、EDM路線で成功を収めた三代目JSBとは一線を画する曲調と言える。


 ちなみに、三代目JSBの1stアルバム『J Soul Brothers』のボーナストラックには、「24karats STAY GOLD feat. 三代目 J Soul Brothers」なるナンバーが収録されている。EXILEと三代目JSBが共演し「世代超えて受け継いでくスタイル」というリリックを歌ったナンバーだ。


 そして「24karats」は今年でパフォーマーを引退するMATSUが前身を立ち上げたブランド名でもある。EXILE一族をつなぐ役割を果たした「24karats STAY GOLD」と同じように、この「24karats GOLD SOUL」も、勢いの逆転した三代目JSBとEXILE本体を再接続する役割を課せられた一曲と言える。


 こうして考えてみると、人数を増やし世代を広げ「一族」を拡大しつつキーワードでそれを接続していくEXILEと、飄々と一人で25年トップに君臨し続けている福山雅治というのは、なんとも好対照でもあるなあ、と思った。(柴 那典)