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しゃべるテディベアに果たして“人権”はあるのか? 『テッド2』劇場公開レビュー

2015年08月29日 16:11  リアルサウンド

リアルサウンド

(C) Universal Pic tures.

 可愛らしい姿とは裏腹に中身は中年男性、しかも大好きなのは下ネタとビール、そしてマリファナという“世界一ダメなテディベア”として、ここ日本でも爆発的な人気を獲得。興行収入40億円を超える大ヒットを記録した映画『テッド』。その続編にあたる『テッド2』が28日の金曜日、いよいよ日本でもロードショー公開された。同日の夜には、“大人になるまで待てない!”ヴァージョンとして、子どもでも楽しめるよう再編集された「PG-12」の特別版(オリジナル版は「R15+」)が地上波で初オンエアされるなど、にわかに“テッド祭り”の様相を呈していた28日の夕刻、早速『テッド2』を観に、渋谷の劇場まで足を運んでみた。


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 同日夜に放送された“特別版”では、やはり下ネタの数々(テッドの腰振りシーンも)、マリファナ吸引シーンの多くがカットされていたことから、「どこか物足りない」、「下ネタとマリファナがなければテッドじゃない」といった感想も多く見受けられたが、まずその点については安心(?)してほしい。監督・脚本、製作、そしてテッドの動きと声を担当するセス・マクファーレンをはじめ、主演のマーク・ウォルバーグなど、前作とほぼ同じスタッフで作られた今回の『テッド2』(日本語吹き替え版のテッド声も有吉弘行が続投)は、のっけから下ネタ&マリファナ満載の「R15+」指定である。


 さて、平日の夕方にもかかわらず、いかにも渋谷ふうの若い男女でごったがえした劇場。「みんなヒマなのかな?」と素朴な問いを口にする高校生や、なぜかスケボーを小脇に抱えた若者、テッドのぬいぐるみを持参した女性グループなど、なかなかカオスな状況である。そして、いよいよ『テッド2』の上映がスタート。前作のエンディングに登場した教会で、今度はテッドが結婚式を挙げている(えっ、ぬいぐるみなのに?)。その後、結婚パーティからオープニング・タイトルへと繋がるミュージカル・レビュー調の展開は、まさしく圧巻。前作の成功を受けて、予算的にも技術的にも、格段にスケールアップしたことが窺えるシーンに仕上がっていた。


 しかし、そんな華やかなシチュエーションから一転。早くもケンカの絶えないテッド夫婦は、その関係を修復すべく、「子作り」を画策。とはいえ、テッドにはナニがついていないので、親友ジョン(マーク・ウォルバーグ)とともに、優秀な遺伝子を持った精子をゲットすべく、アメフトのスター選手の自宅を急襲。その後も、「不妊治療」のクリニック、「養子縁組」を行う団体を訪れるなど、物語はいささか不思議な方向に……そして、ふたりが唐突にぶち当たる「テッドは人間ではない」という、映画の世界観そのものを揺るがすような根本的問題。物語はやがて、テッドの「人権」をめぐる法廷劇へと舞台を移してゆくのだった。


 前作以上の振り幅で、荒唐無稽なファンタジーとリアリティのあいだを慌ただしく行き来してゆく『テッド2』。相変わらず下品なジョークや映画ネタで盛り上がり、ときには殴り合いのケンカをしつつも、最後はマリファナでチルアウトするテッドとジョンの友情は前作と変わらないものの、そこに新ヒロインであるマリファナ好きの新人弁護士サマンサ(アマンダ・セイフライド)が加わり、「人権」から「正義」、そして「愛」に至るまで、物語は次第に何やらスケールの大きな話となってゆき……その背後に、アメリカという国が内包する「人種差別」の問題があるのは言うまでもないことだろう。でも、『テッド』って、そういう話だっけ?


 その展開に軽く戸惑いながらも、可愛らしいテッドの姿と、彼が放つ下品なジョークの数々に盛り上がる観客たち。そして、今回もまた唐突に訪れる感動的なクライマックスに、思わず涙ぐむ女子の姿もチラホラ……果たして、テッドは人間として認められるのか? そして、前作でテッド誘拐を試みた悪役ドニー(ジョヴァンニ・リビシ)が、性懲りもなくテッドたちに仕掛ける新たな罠とは? 是非その目で確認してもらいたい。(麦倉正樹)