フィリップ・マッド氏はCIAやFBIの高官として25年もの間、情報収集や国家への脅威に対する対策などに携わってきました。その経験を活かし、彼は複雑なデータの分析とリスクを分析するシステムを開発しました。
テロリストとの戦いにおいても年金ファンドの運用においても、「決断」というものは同じような過程を辿るとのこと。マッド氏は、著書「The HEAD Game」の中で、複雑な問題を迅速に解決する方法を5段階に分けて説明しています。(文:パッタナカーン山崎)
1.真の問題点を発見すること
思い込みによって、何が問題点なのかを間違えることがよくあります。正しい答えに辿りつくためには、真の問題点を見つけることが必要です。私たちは結論を急ぐあまり、データの分析に時間を使いすぎ、本当に知りたいことは何かをじっくり考えることをしないものです。すぐに結論を出そうと焦らずに、今までを振り返り、自分の求めているものは何なのか考えることから始めるべきだ、とマッド氏は指摘します。
2.自分の情報ファイルを作ること
情報過多は混乱を招きます。これを避けるためには、情報を種類別に分類してデータを管理する必要があります。マッド氏がCIAに勤務していた時には、アルカイダのデータを「資金」や「徴兵」「リーダーシップ」「コミュニケーション」「訓練」「武器調達」などに分類していたそうです。情報が入ってきたら1つのファイルにまとめておくのではなく、定期的に整理して分類しておきましょう。ファイルは10種類までにしておくと管理しやすくなるそうです。
3.「モノサシ」を決めること
次にマッド氏は、問題を正しく解決しているかを測る「モノサシ」を決めよといいます。自分の思考過程をオリンピックのスプリンターのトレーニングと仮定すれば、ストップウォッチなしでは正しいトレーニングはできず、実際のレースでは勝てないといいます。
ただ、彼の例えではよく分からないという人も多いかもしれません。モノサシとは原文で「METRICS」となっていますが、いわゆるプロジェクト管理の世界で「メトリクス管理」というと、物事の進捗を数値の分析によって可視化することなどを指すようです。これによって決断の枠組みが決まることになります。
4.データを収集すること
決断に役立つ枠組みが整ったら、マッド氏はデータの収集を始めるようにます。入手した情報はカテゴリー毎にファイルに分けますが、ファイルに該当しないものは必要ありません。情報が多いからといって、明確な分析的決断ができるわけではないのです。データを分類し終えたら、自信を持って問題点を検討できるでしょう。
5.何か見落としているものはないか見直すこと
複雑な分析は簡単ではありません。マッド氏は、その過程には必ず不備があると想定し、チェックすべきとクギを刺しています。
抽象的な表現が多いのですが、自分の仕事に当てはめて具体的に考えてみるとヒントになるかもしれません。さらにマッド氏は「よくある3つの落とし穴」として、難しい決断をする際に次の3つのことに注意するよう呼びかけています。
(1)直感的に既知の事柄や最近のニュースに関連づけてしまう「バイアス」
(2)よい所に影響されて悪い部分を見ようとしない「ハロー効果」
(3)感情的になっている時「直感を取るか分析的な方法論を取るか」を選択すること
マッド氏は「直感は信じません。危険であり不安になるから」といい、「複雑な決断をすることはとても困難です。問題にぶち当たった時は、データに飛びつく前に『自分が向かっている方向は正しいのか?』と自問しましょう」と言っています。
(参考)A FORMER CIA EXECUTIVE'S ADVICE ON HOW TO MAKE HARD DECISIONS
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