トップへ

スーパーGT:鈴鹿1000km直前プレビュー「荒れる展開になりそう」

2015年08月28日 19:50  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

GT500の多くのチームが警戒するPETRONAS TOM'S RC F
スーパーGT第5戦鈴鹿1000km。金曜日の搬入時、曇り空から突然、大粒の雨が降り出してアスファルトを黒く染めた。と、思ったらすぐに雲間から太陽の光が差し込み、目を細めるほどのまぶしい明るさに。どうやら、今週末はこの搬入日のようにコンディションの移り変わりの激しい、そして荒れた展開になりそうな雰囲気だ。

 ドライコンディションで順当ならば、GT500クラスはウエイトの軽めなレクサス勢、PETRONAS TOM'S RC FやDENSO KOBELCO SARD RC F、WedsSport ADVAN RC Fが予選上位候補に挙がり、ホンダ陣営ではARTA NSX CONCEPT-GT、ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTが予選で上位に来ることが予想される。ウエイトハンデの重い(そして燃料リストリクター径が縮小されたランキング上位)GT-R陣営は、予選は厳しい戦いになることは間違いない。

 ただ、これがレースとなると、展開はまったく別に考えなければならない。総合力でマシンのパフォーマンスが高いGT-R陣営はある程度、入賞圏内に入ってくることが予想され、予選で下位に沈んだチームでも燃費やドライバーの走り方次第では4ピット/5スティントと、5ピット/6スティントと分かれる展開でレースでの逆転も予想される。

 昨年は燃費走行をしながら4ピット戦略を選ぶチームがほとんどの中、5ピット戦略で速いラップタイムを刻んだPETRONASが優勝を奪った。ここで面白いのが、メーカーによって考え方が分かれていること。GT-R陣営のあるエンジニアが「5ピットが基本」と考えるのに対し、レクサス&ホンダ陣営は「5ピットより4ピットで行きたいけど、行けるかどうか」、「4ピットか5ピットかは、フリー走行の燃費計算で考える」と、どっちとも決められない状況のまま、セッションを迎えるのだ。1回のピットストップでインラップからピット出口まででおよそ1分弱、時間はロスしてしまう。その1分弱をコース上でどう稼ぐのか。まずは最初のピットタイミングで各チームの狙いが見えてくる。

 もうひとつ、レースを考えるのに重要なのがタイヤパフォーマンスだ。前回の富士ではD'station ADVAN GT-Rのヨコハマタイヤがレース終盤にも衰えないラップタイムを刻み、見事今季初優勝を飾った。同じヨコハマユーザーとして、WedsSportの坂東正敬監督は「ヨコハマ勢として2連勝を目指す」と今週末に期待をかける。さらに坂東監督は「前回の優勝でヨコハマタイヤにいい流れがきていますし、前回、D'stationが勝ったので、ウチにはプレッシャーになっています。今週末は雨も絡んで荒れる展開になりそうなので、どのタイミングでピットインするか、監督の決断が重要になってくると思っています」とレース展開を予想する。

「幸いにも、いや残念ながらウエイトが軽いままなので(苦笑)、そろそろ結果を出さないといけないと思っています」と話すのはARTA NSX CONCEPT-GTの佐藤真治エンジニア。ARTAは前回の富士でも予選2番手の速さを見せており(決勝はリタイア)、今回も予選で上位に来ることは間違いない。予選の速さを長い決勝でも活かしたいが、残念ながら週末は雨の予報。「ウエットだったらギャンブル的要素も出てきてすごく難しくなるので、できればずっとドライで安定したコンディションでやりたい」と佐藤エンジニアが話すように、天候が大きなターニングポイントになる。

 今回のGT500は本命が絞りづらく、ウエイトハンデがどの程度、影響するのかも分かりづらい。いずれにしても、多くのチーム関係者が声をそろえるのはPETRONASをマークしていること。長距離戦では戦略などチームの総合力が問われるが、そこで力を発揮するのが昨年も勝っているPETRONASというわけだ。PETRONASに続いては、この鈴鹿&1000kmを得意とするKEIHIN NSX CONCEPT-GT、そしてMOTUL AUTECH GT-Rの名前が挙がった。燃料リストリクター径が縮小されているランキング上位チームは優勝争いは厳しいだろうが、入賞圏内、そして表彰台争いには加わってくる可能性がある。ランキングトップのカルソニック IMPUL GT-RとMOTUL、そしてKeePer TOM'S RC Fのポジションは、今回の見どころのひとつだ。

 GT300の今回の注目はJAF-GT勢。マザーシャシー勢はコーナリング性能が高く、VivaC 86 MCはこの鈴鹿では予選で上位に来ることが予想される。また、ハイブリッド勢のTOYOTA PRIUS apr GT、ARTA CR-Z GTは燃費の良さがこの1000kmで活かされるはずで、ピットタイミングを含めて注目だ。さらには長距離戦のチーム力で考えればグッドスマイル 初音ミク SLS、B-MAX NDDP GT-R、Studie BMW Z4が決勝では着実に順位を上げてくると予想される。

 この鈴鹿1000kmはいつものレースより獲得ポイントが大きく、GT500、GT300ともにこの一戦でチャンピオン争いが絞られることは間違いない。降雨も予想されるなど荒れた展開になる可能性も高く、今回の鈴鹿は予選グリッドやウエイトハンデだけで判断するのは早計だ。