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DTM:“接触指示”騒動でアウディに厳罰。シャイダーはモスクワ戦出場停止に

2015年08月27日 19:00  AUTOSPORT web

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第10戦レッドブルリンクを走るティモ・シャイダー。第11戦/第12戦のモスクワは出場停止となった。
DTMドイツツーリングカー選手権のモスクワ戦を目前に控えた8月26日、フランクフルト空港に隣接するシェラトンホテルにおいて、レッドブルリンク戦でアウディのティモ・シャイダーが引き起こした事件に関して、ドイツモータースポーツ協会(DMSB)の処罰審査会議が行われ、シャイダーのモスクワ戦の出場停止などの厳しい評決が下された。

 この評決によりシャイダーは、モスクワで今週末に行われる第11戦/第12戦に参戦することができなくなったほか、アウディスポーツ代表のヴォルフガング・ウルリッヒに対しても今季の残り全戦でピットレーンへの立ち入りとチームラジオへのアクセスが禁じられることになった。さらに、アウディ陣営がレッドブルリンクの2戦で獲得したマニファクチャーポイントである全62ポイントが抹消されたほか、アウディには20万ユーロ(約2760万円)の罰金も科せられている。

 この一件は、8月2日に行われたレッドブルリンク戦のレース2(第10戦)の最終周に発生した接触行為が発端。ここでは、ロバート・ウィケンスとパスカル・ウェーレインの2台のメルセデス陣営とシャイダーが、6位のポジションを巡って僅差のバトルを展開していた。ただ、メルセデス2台を追うシャイダーが、すぐ目の前を走行中のウィケンスに接触し、その前方のウェーレインともどもグラベルに押し出すことに。これにより、シャイダーが6位でチェッカーを受けた(その後失格)一方で、ウィケンスとウェーレインはノーポイントでレースを終えることとなった。さらにこの接触の直前、シャイダーにはラジオで「ティモ、押し出せ!」との指示がドイツ語で送られており、これが中継にも乗ったため、波紋を呼ぶこととなった。

 レース終了後には「あの無線の指示の声は誰なのか」とパドックやメディアセンター内がざわつき、「あれはウルリッヒ代表ではないか」との噂がすぐに流れていた。しかし、レース後の記者会見の場ではウルリッヒは自身の無線ではないことを明言し、出席していた記者たちが首を傾げる場面もあった。

 ただ、「ウルリッヒ代表ではないとすると誰なのか」という質問責めにあったからなのか、その後ウルリッヒはアウディのリリースの中で自身の無線であることを認め、「無線が繋がっているとは知らなかった」と苦しい弁明をした上でメルセデスへ謝罪。一方、“被害者側”となるメルセデス陣営では、モータースポーツ部門のマネージングディレクターを務めるトト・ウォルフが「そのようなスポーツマンシップに反する者は今後一切サーキットに来るべきではない」と痛烈な批判を展開していた。

 また当事者のシャイダーは「無線は聴こえていなかった、あれは偶然だった」と弁明したものの、レース後にテレメトリーなどのデータ一式、そして映像分析を詳細に行った結果、明らかに故意であることが判明し、アウディとメルセデスによる泥沼の“戦争状態”へと発展していた。

 DTMでは今季から、ファンサービスの一環として公営放送のテレビ生中継やインターネットのライブストリーミングの視聴者へ全チームの無線コンタクトを解放しており、このアウディの無線は全世界に配信されることに。DTMやDMSBとしても、イメージダウンにつながりかねない一件となった。

 26日の午前10時から開催された今回の会議は、予定時刻を大幅に過ぎた16時にやっと評決が下ることとなったが、この日はモスクワ戦に向かうためにフランクフルト空港からドライバーやチーム関係者の多くが午前中に飛び立っていた。処分の内容次第ではシャイダーもクルーとともにモスクワへと向かう予定だったが、今回はひとり家路に着くことになった。

 アウディは今回のDMSBの評決が下った後、Facebook上でこの件に関する態度を表明。この評決に従うとしたものの、アウディスポーツ及びウルリィッヒがすでにメルセデスやそのファンへ謝罪をしているため、今後一切この件についてのコメントはしないと表明した。

 一方、メルセデスのウォルフは「今回の判決を承知したが、我々のドライバー2名がレッドブルリンクのレース2でノーポイントとなったことに変わりはない」、「この事故が起きるまで、いつもウルリッヒ代表からはスポーツマンシップとリスペクトを教わっていた」と皮肉交じりのコメントを発表。とは言え、「今回の評決により、今後はお互いにより良いレースができるように努めたい」とした。

 なお、現時点では誰がシャイダーの代わりを務めるのかは明かされていないが、この週末にはニュルブルクリンクでWEC世界耐久選手権が開催されることとなっており、WEC参戦ドライバーたちが代走することはできない。ただ、ル・マンで3台目のR18 e-トロン・クワトロを駆ったドライバーとしては、フィリペ・アルバカーキがDTM参戦経験をもっているほか、レネ・ラストも豊富なDTMテストの経験がある。

(Midori Ikenouchi)