アルバイトの学生が不当な扱いを受ける「ブラックバイト」問題。被害者は大学生のみならず、高校生にも拡がっている。しかし「このバイトおかしいかも…」と思っても、どこに相談すれば良いか分からない高校生がほとんどだ。
そういった現状を改善しようと、夏休みの最終週に高校生たちが立ちあがった。8月27日の午前11時から厚生労働省で、高校生による労働組合「首都圏高校生ユニオン」(以下、高校生ユニオン)の結成記者会見が行われた。
団体交渉で給与の未払いが認められた生徒も
高校生ユニオンのメンバーは5人。いずれも首都圏在住の高校生だ。会見に出席した3人の高校生は、いずれもアルバイト先で給与の未払いなど不当な扱いを経験していた。
高校2年生の男子生徒(17歳)のアルバイト先の飲食店では、給与の計算が15分単位。大型のショッピングモール内の店舗で、着替えや移動で職場まで最低5分はかかるものの、その部分の給与も支払われない。
モールで働くための研修を受けた分の時給が発生せず、制服代が初月の給与から天引きされていた。彼は現在団体交渉中で、給与未払いについては相手側も認め、支払われることになったという。
高校3年生の女子生徒(17歳)は、コンビニでのアルバイトを2年間継続。始めた頃には研修の期間を終えても、5か月間は給与が研修中のままだった。オーナーに差額分を請求したところ、「計算して持ってくる」と言われたが、今でも払われていない。
夏に近所でお祭りがある際は、半強制的に出勤。午後2時から7時までのシフトだったが、午後7時から10時まで、外の金魚すくいやヨーヨーの店番を担当。しかし、その分の給与が支払われていないという。
「あなたが抜けたら、ここどうなるの?」と問う店長
他に、アルバイト先のコンビニで自分だけ店長やオーナーから執拗に注意されたり、高圧的な態度を取られたりといったパワハラ経験を語る高校2年生の女子生徒(17歳)もいた。彼女も団体交渉を行い、現在解決目前とのことだ。
高校生ユニオンでは、相談が急増しているノルマや罰金、商品の買い取りなどの問題も解決していきたいとしている。
彼らの活動をバックアップする「首都圏青年ユニオン」執行委員長の神部紅氏は、ブラックバイトが広がる背景には非正規労働者の増加があると指摘する。
店舗に責任の取れる正社員が1人か2人しかおらず、責任を伴う業務がアルバイトにもなだれ込んでくる。バイトリーダーやシフトリーダーを務める高校生もおり、組織への帰属感も相まって、
「自分がいないと回らない」「未払いなどがあっても仕方がない」
と思い込んでしまう。そういった歪んだ関係が発生しているとのことだ。
例えばある女子生徒は、テスト前に休もうとしたところ「あなたが抜けたら、ここどうなるの? 困るでしょ。他の人に迷惑かかるんだよ」と言われ、シフトに入らざるを得なかった。この生徒は他の時間で挽回したものの、思うような点が取れなかったという。
背景には「貧困家庭の増加」も影響
神部氏は、貧困家庭の増加も要因のひとつと指摘。アルバイトで自分の学費や定期代のみならず、家族の生活費をまかなう生徒もおり、嫌なら辞めろというわけにもいかない。
多くの高校生は身近に労働相談をして解決したという人を知らないため、高校生ユニオンでは今後労働相談に取り組む高校生の姿をアピールしていくとのこと。具体的には学校での講演や啓蒙活動、労働相談のホットラインや1分単位での賃金支払いを求めるキャンペーンなどを行う予定だ。
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