就活の後ろ倒しにより、大学生の活動期間が長期化している。これに伴い学業への影響も予想されるが、世間では「どうせ大学の勉強なんて世の中に出たら役に立たないから」と軽視する人も多いに違いない。
しかし人事コンサルタントの安達裕哉氏は、大学で「きちんと」研究をしていた人は「企業でも有能」であるとするブログエントリーを公開し、5つの理由を挙げている。これに対しネット読者は納得する人がいる一方、有能な人物が日本企業で活躍できるとは限らないなど冷ややかな声もあがっている。
「もっと勉強しとけばよかった」と後悔する声もあるが
安達氏があげたのは、「論理的に考えるクセがついている」「文章が書ける」「プレゼンテーションができる」「オリジナリティと普遍性を重視する」「よく勉強する」の5つ。大学は専門知識だけではなく、考える技術や論理における作法を教えてくれる場でもあり、それが企業でも役に立つと指摘している。
たとえば論文とビジネス型の文章には結論を先に書くという共通点があり、真剣に論文に取り組めばビジネスでも通用する文章が書けるようになる。また、研究発表などで行うプレゼンテーションでは教授や周りから批判を受けるので、それにどう対処するか考えた経験もビジネスにつなげることが可能だというわけだ。
確かに入社したてで業務に精通していないのに、「即戦力」を感じさせる人材はいる。そういう人たちは研究を通じて、ビジネスにも通用するスキルを身につけていた可能性が高い。
この記事を読んだ人からは、「わかる」「考える癖や過程、理系の卒論やっといて良かったと思うことは働いていてよくある」と賛同する声や、「もっと勉強しとけばよかった」と後悔する声がネットに書き込まれている。
その一方で、安達氏の主張は分からないではないものの、この5つのスキルを身につけたところで、実際に企業で「有能」と認められるとは限らないというコメントも多い。
「論理的であることを重視する社会」が前提になるのか
もっとも目につくのは、研究でそのようなスキルを培ったとしても、現在の日本企業で活かせる場などないという疑問だ。
「そんなこと入社してから一度も求められたことないぞ」
「どこでそれ使うんだ・・・そんな仕事はほとんどない(適当)」
「ちゃんとした企業ならね」
「しかしビジネスには論理も通用しないときがあるから難しい」
中には「ロジカルに説明するとなぜか怒り出す人もいる。もう疲れた」という嘆く人も。有能な人物ほど苦痛を感じる環境というものもあるかもしれない。
「問題は論理的であることをきちんと重視する社会であるかどうか」
「問題はこういう人たちをマネジメントするノウハウが企業に浸透してないことではないかしらね」
など、安達氏があげた要素を重視する会社や企業、上司でなければ、研究を通じて身につけた経験や能力を活かすことは難しいとする指摘もあった。「こういう資質を活かせる場所って日本の企業だと研究所とかしかなかったりする」との意見も出た。
企業調査でも「コミュ力」重視がトップに
企業側の姿勢も、大学で研究を一生懸命やった人を歓迎したいというものではない。経団連が2014年に実施した調査では、企業が「選考にあたって特に重視した点」のトップは「コミュニケーション能力」(82.8%)で、「主体性」(61.1%)や「チャレンジ精神」(52.9%)が続いた。
一方で、安達氏があげたスキルに通ずると思われる「論理性」(23.7%)は7位。「学業成績」(6.2%)に至っては17位と、大学での研究意欲に水をかけるような結果が出ている。
もちろん「コミュ力」の中に論理性や文章力、プレゼン力が含まれている可能性もあるが、一般には「明るさ」「ノリのよさ」と同一視されることも多い。社会人からは「人たらし能力の方がはるかに役に立っているようにしかみえないよ」とこぼす声もあった。
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