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【今宮純】ベルギーGPドライバー採点&短評

2015年08月26日 22:40  AUTOSPORT web

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最高得点は「優勝に価する3位」を得たロマン・グロージャン
今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。F1第11戦ベルギーGPの週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレイを重視して採点する。(最高点は星5つ☆☆☆☆☆)

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☆ マーカス・エリクソン
 こつこつポイントを貯めていかねばならない、いまのザウバーにエリクソンはぴったりかもしれない。ハンガリーGPに続き2台が10位・11位フィニッシュ、エリクソンは2点追加。好スタートを切ったあとのペースは上がらなかったが、着実に10位連続入賞。アップデートしたフェラーリ・パワーユニットの効果を後半これから引き出すには、フェリペ・ナッセと役割分担しつつ、2年目の経験がいっそう求められる。

☆ カルロス・サインツJr.
 レスダウンフォース&ロードラッグの空力セットアップで挑んだトロロッソ。とてもナーバスな挙動をオールージュ脇で見ていて、はらはらドキドキ(!)。それでも果敢にアクセルを踏む走りはWRCスターだった父親みたい。予選トップ10アタックは今年のベストと言おう。ところが、またまた4レース連続のパワーユニット関連トラブル。9月1日21歳の誕生日を境に、不運の連鎖を断ち切れるか?

☆☆ ニコ・ロズベルグ
 スペインGPからハンガリーGPの6戦を抽出すると、首位ルイス・ハミルトンを“6点リード”。決して負けてはいないが、金曜フリー走行2回目で、あの恐怖体験。ブランシモン入口で300km/hコーナリング中に右リヤタイヤがバースト。エスケープ内でクラッシュせずに止まったのは奇跡だ。翌日から何事もなかったかのようにドライビングに打ちこむ姿はレーサーそのもの。たくましい精神力を讃える。

☆☆ キミ・ライコネン
 ミハエル・シューマッハーを超える歴代1位の大記録、27戦連続入賞を持つライコネン。スパ4勝、2008年にラスト2周でつぶれていなければ前人未到の“5連覇”達成だった。今年も「キング・オブ・スパ」と描いた旗を振るファンを毎日のように目撃。FP1から快調なリズムでセバスチャン・ベッテルに先行。ところが予選Q2で、またトラブルだ。あれがなければベッテル以上のグリッドを占め、まったく違うレース展開も可能だった……。「スパ王」の秘密はセクター2のライン、ブランシモンからスタブローにあると思える。

☆☆ フェルナンド・アロンソ
 パワーユニットについて口を閉ざす彼。そのぶんコース上の走りで、いまのホンダの「真実力」を語りかける。涙が出そうになったオールージュ。鈍い排気音ときわどい動きはマノー程度、それでも「前進あるのみ」とポジティブに……。

☆☆☆ ダニール・クビアト
 バルテリ・ボッタス、ライコネン、フェリペ・マッサ、セルジオ・ペレスを次々にオーバーテイク、12番手から4位へ。ケメルストレート・エンドのセクター1で最高速345km/hを記録。RB11のダイナミック・ダウンフォース効率とルノー・パワーユニットの回生力を駆使したクビアト。ブレーキングでタイヤロックしながらも制動力をコントロールしていたプレーが目立った。

☆☆☆ セルジオ・ペレス
 暴れん坊イメージが今年やや消えて、自滅ミスはゼロ。チーム方針に従いダウンフォース設定をニコ・ヒュルケンベルグと分けてセットアップし、自己ベストグリッドの4番手を獲得。スタート後のレ・コームでハミルトンを抜きにいく攻撃は見事。中盤ペースが落ちたのはレスダウンフォースゆえにタイヤ性能劣化が想定以上に悪化したから。それでもウイリアムズのマッサを抑え込み、5位10点。孤軍奮闘して今季チームベストの成績を持ち帰った。

☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
 相手が誰であろうとブランシモンでアウトラインから並び、攻め続けるプレーに大器の可能性をはっきり見た。8位という結果以上に強烈なインパクトを魅せた17歳。現在進行形で「伸びる天才」、後半戦さらに注目したい。

☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
 F1に限らずレーシングスポーツを支えているのは4本のタイヤ。その「真理」を訴えたいからこそ、レース後、彼は態度と言動でアピールしたのだろう。43周目、あのバースト(暴発)の背後に、もしロマン・グロージャンが急接近していたら、もしマシンが反転して丘にいる観衆のなかに飛び込んだら……と想像していただきたい。臆せず警告を発したベッテルの行動を支持する。

☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
 完璧のひとこと。6戦連続ポールポジションの取りかた、Q2まで相手ロズベルグを行かせ、Q3でとっておきの力を出しきる。0.827秒タイムアップ、これはロズベルグにとってショック。今季10戦、予選Q2は5勝5敗で互角、だが最後の勝負Q3になると9勝1敗。後半の開幕戦も予選から翻弄し、新スタート手順を決め、43周を完璧に進めた「2.058秒差の大独走」だった。

☆☆☆☆☆ ロマン・グロージャン
 向かい風がロータスとグロージャンの“追い風”になった。日曜のスパは朝から風速10m以上の強い南風に一変、ケメルストレート・エンドのレ・コーム進入は向かい風に。そこでグロージャンは常に限界ぎりぎりのブレーキング、マシン空力設定をおそらく前寄りにしていたのだろう。減速挙動が安定、だから差し込み、抜けた。アップデートなど何もなく、財政逼迫したビンボー・チームで3位は勝利に等しい。身内に不幸があった週末、「全身全霊を込めた走り」を亡き祖父に捧げた。ベストタイムは12位でも43周にわたって全力ペースを持続、グロージャン75戦目の最高に“いいじゃん・レース”──。