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MINMIが語る、アーティストとしてのエゴの大切さ「意見を言ってみるのは、一歩前に進むこと」

2015年08月26日 20:21  リアルサウンド

リアルサウンド

MINMI

 MINMIが、8月26日にニューアルバム『EGO』をリリースした。"EGO"というタイトルが表すように、MINMIはーー人生においてエゴは出し合ってこそ、分かり合える人間関係の方が深かったりするわけで、クリエイティブなものを産み出すときにも必要だったりするーーと語り、アーティストとして、母親として挑戦し続けることが大切だという。そうして完成した今作はMINMIにとって"ダンス・ミュージック回帰"と呼べる意欲作。新たな若い世代のファンの支持も集め、第二期に入ったMINMIにじっくりと語ってもらった。(編集部)


・「私は挑戦し続けないとダメなんだな、と」


——前作『BAD』から約1年ぶりの新作アルバムですよね。『BAD』からは過激なテイストのシングル「#ヤッチャイタイ」も話題になりましたが、そうした<アーティストとしての思い切りのよさ>が溢れていたアルバムが『BAD』だったのかな、と。その振り切り具合が今作にも繋がっていると思うのですが、ご自身で振り返ってみてどうでしょうか?


MINMI:「#ヤッチャイタイ」は、結構周りのみんなに(リリースを)止められたので、逆に、何をやっても自分は腹括った上で『BAD』を出すぞ、と思ってリリースしたんです。でも多分、ファンの方はすごくその心境を分かってくれていて、MINMIのアーティスト感や尖っている部分が戻ってきた、みたいな気持ちで楽しんでくれたかと思うんですね。


——どちらかといえば、デビュー当時のMINMIさんに近いような?


MINMI:そうですね。デビュー当時、『Perfect Vision』を出したときのように、ダンス・ミュージックをイメージしていた頃のMINMIが戻ってきた、みたいなことも言われましたし。


——色んなことにチャレンジして、そのスタンスに戻ってきたという感じでしょうか?


MINMI:やっぱり私は挑戦し続けないとダメなんだな、と自覚したというのはありますね。以前はむしろ、『Perfect Vision』の頃のイメージを崩すなと言われていて。「写真を撮る時も笑顔はいらない、最初の尖ったイメージのままでいろ」と。でもその時の自分が探していたのは、もっとナチュラルで等身大の自分を音楽で表したいという道だったんです。そんなときに、ずっと突っ張って尖っているっていうのが、自分にはしっくりこなくて。デビュー・アルバムの『Miracle』から次の『Imagine』とアルバムを出していくなかで、だんだんと睨みつけていない写真にも挑戦していって。そのあと、母になって4thアルバムの『MOTHER』を作るときも、母親でいることとアーティストでいることが現実的にかけ離れてしまうから、そこでも「(イメージ的に)大丈夫なの?」という声があったんですね。でも、世の中にない立ち位置を切り拓くということがすごく重要な気がして、あえて”MOTHER”というお母さん目線の歌を作ったりして。そうしたら、お母さんになったことでファンがたくさん増えたんですよ。するとやっぱり「お母さんらしからぬ歌は歌うな」ということにもなり。でもやっぱり、お母さんになったって綺麗にみられたかったり、恋をしたかったりすることもあるじゃないですか。他のお母さんアーティストがやっていないなら、私がやるべきかなと思って、また挑戦して。思い切ってやってみたときに、私から離れていったファンの人よりも、そんなMINMIを応援したいと言ってくれる人が増えたんです。


——まさにMINMIさんというアーティストが、同じ立場の女性の共感を呼んだから、ということですよね。


MINMI:世の中における<言いたくても言えないところを切り開いていく音楽>の必要性をすごく感じましたね。人生において予測できないことはいっぱいあって、「こう思われてるけど、私、実はこんな部分があるんだよ」という部分を出していくのが、音楽的な役目でもあるのかな、と感じることもありましたし。


・「隠しているところに、伝えられることがある」


——その意識が新作にも繋がっていくと思うのですが、「自我」という意味をもつ『EGO』というタイトルに、とても強い意志を感じました。


MINMI:自分の我を突き通すーエゴを出すーことって、すごくわがままに見えちゃいそうだし、他者を傷つけそうだし、私に限らずみんな難しいことだと思うんですよ。でも、エゴとエゴを出し合ってこそ、分かり合える人間関係の方が深かったりするわけで、クリエイティブなものを産み出すときにも必要だったりする。だから、エゴも大切な要素の一つだなって今になって言えると思うんです。


——とくに、今の時代はSNSも発達しすぎて友達同士でも自分のエゴを出せない女の子も多そうですよね。自分のエゴを解放しきれない、というか。


MINMI:そういう主張を表に出すことが怖いんじゃないですかね、何か。でも、逆にこの時代だからこそ、意見を主張して「あの子キツいな、わがままだな」と思われてたとしても、逆に「あの子って、自分の気持ちを素直に言えて素敵だね」と思ってくれる人も現れる時代だと思うんですよ。タレントさんとかでも、すごく嫌われてバッシングされている方もいると思うけど、その裏で、それだけバッシングされても自分を貫いていることによって、すごく共感を呼んで、実はじわじわと人気が出る人だっているじゃないですか。間違っていたとしても、その意見を言ってみるということは、一歩前に進むこと。だから、間違っていても「一回、言ってみ!」っていう。間違えてバッシングされても、その裏で「君には素晴らしい勇気があるよ」って言ってくれる人がいるはずだから。そういう意味で、逆に今はエゴを主張していい時代になってきているのかなって思います。


——なるほど。でも、その一歩がなかなか踏み出せなかったり……。


MINMI:やっぱり、みんな既存のところにハマりたがるんじゃないですかね。既存の枠を一歩抜け出すのにすごく勇気がいる。でも私は、アーティストとして勇気を持ってそこを出ることが宿命だと感じているんですけど。「言っていいのかな、これ…」みたいなことをポンっと言っちゃう、とか。


——MINMIさんご自身も、身近な方が本当の自分を出せずに踏みとどまっているな、と感じることはありますか?


MINMI:感じます、感じます。例えば、ママになったのに、ママっていうことを隠してアーティスト活動を続ける人がいたり、ママの部分を出さないことがプラスの方針と考えていると思うんだけど、実はそこの隠しているところに、もっと本当に伝えられることがあったりすると思うんです。「ママなのにクラブに行っていると、世間の主婦の方たちから“あの人、子供どうしてるんだろう”って言われるのが怖いから、私は夜遊んでいる情報はSNSに載せないの」みたいな声は実際に聞きます。私はあえてそこをもっとぶっ込む…というか、自分が伝えたいメッセージじゃないんです。例えばママだったら、みんなそれぞれライフスタイルは違うけど、子供を本当に愛しているっていう核の部分が大事で。いつどこで遊ぶとか、世間からどう見られるかということよりも、「(子供を)一生懸命愛しているんだよ」って気持ちを大事にすることが、ママとして本質的に大事なんじゃないかなと。そこを守っていたら大丈夫だよ、って思いますけどね。


——なるほど。


MINMI:私も、実際は(ツイッターで)つぶやく内容とかすごく考えちゃいますし、みんなそうだと思いますけどね。私も「これは間違っているから言わないでおこう」と思うのではなくて、今回のアルバムも「迷っているならとりあえず出そう、出してみよう」という感じで発表したんです。


・「またダンス・ミュージックに帰ってきたぞ」


——アルバム本編の内容ですが、まずは導入部分の「もっともっと遊んで」というフレーズが印象的で。これはアルバム全体のモットーでもあるのかな?と。


MINMI:はい。次に続く「ホログラム」のサビも「遊ぼう」って歌詞で繋がるし、音楽で遊ばせたい、遊びたい、遊んでやりたいっていうのは今作のイメージにありましたね。


——それがそのまま、サウンド面にも現れていますよね。今回は、EDM的だったりダブステップ的だったり、よりエッジーなダンス・ミュージック調のサウンドが増えていると感じました。リード・シングルの「MOVE」もかなりアッパーなディスコっぽい雰囲気もあったり。


MINMI:自分のなかでは、『Miracle』、『Imagine』で続いた<MINMIのシリーズ(1stアルバム『Miracle』から5thアルバム『I LOVE』の頭文字をつなげると「M.I.N.M.I」となることから、こう呼ばれる。)>から第二期に入っている、という感じなんです。さっきも話した通り、「またダンス・ミュージックに帰ってきたぞ」という思いが強い。『BAD』を作るタイミングで、昔みたいにクラブに行ったり、新しい音楽をチェックしたりするようになったし、ブランクになっていた分、いろいろ新しいものを吸収したいな、と。なので、新しいダンス・ミュージックはどんどん紹介していきたいと思ってアルバムに入れています。


——そうした試みは、『EGO』に先駆けてリリースされたリミックス企画盤『新MINMI☆FRIENDS ~“BAD” “MINMI”というネタをラッパー、トラックメーカーがどう料理したのか~』にも顕著ですよね。SALUやAKLO、KOHH、JAZEE MINORら、国内のヒップホップ・シーンから次世代のMCがたくさん起用されているのにも驚きました。


MINMI:ヤバいですよね、興奮の一枚ですよね(笑)。このリミックス盤に関しては、スタッフと若旦那が中心になって進めてくれたんです。タイトル通り、私が料理されている感じで作りました。このメンツが一枚のアルバムに収録されていることも凄いなと思っていますし、まさに私の<ダンス・ミュージック回帰>という部分を飾ってくれる一枚ですね。


——『EGO』の話に戻りますが、今作もMINMIさんならではのガールズ・アンセムが多いなと感じました。とくに、ムチムチ女子賛歌の”ボンキュボン“には個人的にもぐっときたのですが、この曲を書こうと思ったきっかけは?


MINMI:きっかけは、メーガン・トレイナーの「All About That Bass」だったんです。あれを聴いたときに、私も「よくぞ歌ってくれた!」と思って。私自身も、痩せれば痩せるほど綺麗になれると思っているときもあったんですけど、海外の人を見たら、もっと色んな体型でファッションを楽しんでいて、ボリュームがあっても堂々としているし、みんなから賞賛もされて、愛されている。「私華奢じゃないんです……」っていうオーラじゃないというか。「モデル体型だけがベストなんじゃない、色んなタイプの美しさをもっと楽しもうよ」という気持ちがあって書きました。


——全体を通して、かなり元気をもらえるアルバムだな、というのが率直な感想です。アゲアゲだったりツンデレだったり、色んな表情の見せ方もMINMIさんらしいな、と。こんなリスナーに聴いてほしい!という思いはありますか?


MINMI:幅広く色んな人に聞いてほしいですけど、「#ヤッチャイタイ」を歌ってから、また次の世代のファンが増えたんです。小中高生が「お母さんがめっちゃMINMI聴いてるんですけど」みたいな子。だからそういう子たちにも聴いてほしいですね。


——もうファンの世代交代が!そんなに若い子が…。


MINMI:中高生の10代の子たち、お母さんはきっと3、40代ですよね。第二MINMI世代が、お母さんと一緒に聴いてくれてるんですよ。インスタにも制服を着て「#ヤッチャイタイ」を踊ってる動画が何千件と上がっていて、Youtubeにもオリジナルの振り付け動画がUPされているんです。歌詞の内容はまだ全部分からないと思うんですけど。でも私、子供のころに大人っぽい歌謡曲を聴くのがすごく好きで。今回だと「濡れそ feat. HAN-KUN」とか「私はポルシェ」とかすごくヤラしい感じじゃないですか。だから、子供は子供で楽しむというか。


——なるほど。2年後にはデビュー15周年を迎えますが、今後のビジョンはどのような感じでしょうか?


MINMI:紅白に一回も呼ばれたことがないので、自分で紅白をやろうかなと思っています(笑)。呼ばれるのを待ってるんですけどね、もう、やるしかないなっていう。あとは、15周年のタイミングで、ファンの方たちも一緒に武道館とかそういう場所でライブが出来たらいいなと思いますね。まずは、年内にツアーをやるので、まずはそれかな。今年のツアーは、マスク・パーティーをするんですよ。ダンス・ミュージックを楽しもうということで、私自身も、去年からレゲエやヒップホップのダンスを習ってるんです。なので、皆さんにも踊って楽しんでもらいたんです。マスクをしたら恥ずかしくないので、思いっきり楽しんでほしいですね。


(取材・文=渡辺志保)