昨年の流行語大賞にもノミネートされていた「マイルドヤンキー」というワードをご存知だろうか。僕は正直、なんとなくしか知らなかったため、もし明日にでも街頭で「マイルドヤンキーをどう思いますか?」とテレビ局のマイクを向けられたら、「許せないですね!戦争反対!」と言う可能性すらあった。
そんな自分ではあるが、8月25日放送の報道番組「みんなのニュース」(フジ系)のマイルドヤンキー特集を見て色々思うところがあった(文:松本ミゾレ)
保育園からの友人と仲良し、好きなアーティストは三代目JSB
番組によると、そもそもマイルドヤンキーという言葉は博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーの原田曜平氏が考案したもの。原田氏いわく、マイルドヤンキーとは、車とEXILEが好きで、大型ショッピングモールを愛する地元志向の若者のことを指すという。
さらに、子供の頃からの友達とべったりしながら、家族と同居して暮らすという特徴もあるそうだ。当然、上京したいという思いも全くない。
番組では、茨城県ひたちなか市に住むマイルドヤンキーの男性(19)の日常に密着。男性は生まれも育ちも茨城県。以前はヤンチャをしていたそうだが、現在は地元のスーパーマーケットの正社員として働いている。
昼間は一生懸命汗を流して仕事をし、夜は自宅に戻って母親の作った料理を食べ、家族の団らんを楽しむのが日課だ。好きなアーティストはやはり三代目 J Soul Brothers。地元には親しい友人も多く、保育園や小学校時代からの付き合いだという。友人らも農家や塗装業、大工として地元で働いている。
仲間との共通の趣味は車だ。自分で塗装をしてみたり、内装を変えてみたり、それぞれにカスタムを楽しんでいる様子が紹介された。若者の「車離れ」が叫ばれる昨今の流れとは真逆だ。
若い労働力が地元に残ってくれるだけでも地方は嬉しい
マイルドヤンキーはみんな地元で働き、地元で消費している。それにしても、彼らはどうして地元を離れようとしないのだろうか?
男性と仲間たちがその理由について語っている。ポイントは地元の濃密な人間関係だ。小学校のころからの友人が身近におり、しかも家族とも仲良し。そのため、彼らは都心に行くよりも、地元に残った方がメリットがあると感じているのだ。
男性も将来はたくさん子供を作って、やはり地元で育てていきたいと語っていた。少子高齢化問題に悩むわが国の状況を省みると、なんとも心強い。地方の過疎化対策にまで貢献している。若い労働力が地元に残ってくれるというだけでも、地方にとってはどれだけありがたいことか。
また、彼らは地方在住ながら消費意欲も旺盛なので、地元の経済好転にも一役買っている。マイルドヤンキーは、本人たちが考えている以上に地方の活性化には欠かせない存在になりつつある。
上京する人にとって「地元=暗黒時代の象徴」?
さて、僕は九州の片田舎出身で、成人してしばらくは上京していたが、そうすると地元が恋しくなってしまい、2年ぐらいで地元に戻っていった。
小学校時代から仲のいい友達も大勢いるので、休日になるとみんなで海や山、パチンコ店に繰り出す日々がとにかく楽しかった。だから番組に出ていた彼らの気持ちも良く分かる。
ただ、みんながみんなマイルドヤンキーになれるわけではない。上京志向の高い若者が、高校卒業後に早速地元を離れてしまい、その後何十年も地元を省みることがないというケースはよくある。この違いは、僕は単純に青春時代の充足度にあると思っている。
マイルドヤンキーになる若者は、少年時代から地元でたくさん遊び、たくさん恋をして、ヤンチャしながら素敵な思い出を作る。だからわざわざ成人して、そんな素晴らしい地元を出て行こうとは思わない。
一方、青春時代にこういう思い出を持たず、ヤンチャな同級生からいじられていたような若者にとっては、地元は暗黒時代の象徴だ。そういう人々が地元に残っても、いきなりマイルドヤンキーに「仲間に入れてよ」とお願いすることはできない。それが理由で、義務教育を終えてすぐに上京するという人も、多いはずだろう。僕も何人かそういう同級生を知っている。
結局のところ、地元に残るか残らないかという選択は、地元の人々との関係に、大いに左右されるのではないだろうか。地元に残りたいと思う若者の絶対数が増えれば、地方は今よりも発展していくに違いない。
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