今回のベルギーGPから、スタートに関する規約が変更された。フォーメーションラップ中のドライバーへの無線によるスタートに関するアドバイスが禁止されたのだ。だが、ホンダの新井総責任者は「我々の経験豊富なドライバーにはアドバイスがなくても心配いりません」と語っていた。
決勝レースは、まさに言ったとおりの展開で幕が開けた。パワーユニットの交換によってジェンソン・バトン19番手、フェルナンド・アロンソは最後尾20番手からのスタート。しかし、バトンは1周目に4つポジションを上げ、アロンソに至ってはスタート直後に一時13番手までジャンプアップする素晴らしいダッシュを決めた。
ところが、その直後バトンのパワーユニットに問題が発生する。バトンによれば「ERSのデプロイメントに問題を抱えていた」という。デプロイメントとは回生で蓄電したエネルギーをコースのどの部分でどれだけ使用するかという配分量のこと。ホンダが金曜日から苦戦していた部分だった。
「予定した場所と違うところで不定期にデプロイ(エネルギー放出)された」と訴えるバトンは、オールージュを登りきったラディオンの直後にエネルギーがなくなってしまい、ケメルストレートをエンジン(ICE)だけで走らなければならないことが何度かあったという。
「これから調査してみないとわかりませんが、エネルギーチャージのデータ設定か、MGU-Hの温度が上がって発電量が減ったのかもしれない。いずれにしてもハード的なトラブルではなく、問題が起きていた時間も一時的なものでした」と新井総責任者は言う。
アロンソには同様の問題は起きなかったものの、金曜日と土曜日の走行が限られたため完璧な状態ではなく「厳しいレースとなった」と認めている。
新井総責任者は今回トークンを使用してアップグレードした「マーク3」のパワーユニットに関しては「出力的には予定どおりの数値が出ている」と明言。ラップタイムに反映されていないのは「エネルギーの量、たとえばMGU-Hの回生量が十分ではないという問題かもしれない。また、パワーユニット全体で作り出したエネルギーを使用する配分が完璧でなかったことも考えられる。特にスパはラップタイムを稼ぐところが上り坂なので、パワーユニット側にとってはエネルギーの回収と配分が非常に難しいコース」だという。的確にエネルギーを配分することが重要であるとわかってはいたものの、実際にやってみると本当に難しい。後半戦のスタート、課題を痛感したホンダだった。
(尾張正博)