ポコノ・レースウェイで開催されたベライゾン・インディカー・シリーズ第15戦。23日に500マイルの決勝レースが行われ、イエローコーションが12回も出る荒れた展開をライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)が制した。終盤トップを争う走りを見せた佐藤琢磨(AJフォイト)は6位でレースを終えている。
12回ものフルコースコーションが出された大荒れの500マイルレースを制したのは、予選8位のライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)だった。ピットストップで順位を下げるシーンが何度も見られたハンター-レイだったが、リスタートでの強さと、その後の1列になってのバトルでも前を行くマシンをパスできるスピードが彼には備わっていた。
「自分のキャリアの中でもベストのドライビングを今日はできていた。いいマシンに仕上がっていたから、順位を下げても挽回が可能だった」とハンター-レイは語った。
事故多発の原因は、エアロキットの登場でダウンフォースが増えたことにあったようだ。マシン同士が接近できるようになったが、タービュランスの中では依然としてマシンは不安定に陥るためだ。
2位でゴールしたのはジョセフ・ニューガーデン(CFHレーシング)だった。序盤を力強くリードした彼はレースの中盤過ぎに後方集団に埋もれた時期もあったが、最後まで粘り強く戦ってポジションを挽回。今シーズン2勝目こそ逃したが、2回目の2位、4回目のトップ3フィニッシュ、5回目のトップ5フィニッシュを飾った。
そして、ポイントリーダーのファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)が大きな価値のある3位フィニッシュを果たした。
「ゴールした時は何も知らなかったから、自分の勝利を喜んでいたが、マシンを降りてジャスティンの件を知った」とハンター-レイは語り、喜びを爆発させることはしなかった。チームメイトの安否が心配される状況だからだ。180周目にセージ・カラム(チップ・ガナッシ・レーシング)がトップを走っていながら単独アクシデントを起こした。そして、彼のマシンから飛び散った破片の中でも大型のノーズコーンがウィルソンのヘルメットを直撃したようで、ウィルソンは気を失ったままコースのイン側の壁に突っ込んだ。カラムは無事だった。
ウィルソンをコクピットから脱出させるまでにセーフティクルーはとても長い時間をかけていた。そして、救出されたウィルソンはそのままメディカルヘリコプターで病院へと運ばれた。事故現場で気を失っていたことも含め、インディカーは情報の詳細を発表していない。このような状況では最悪の事態も考えられる。ウィルソンの無事を祈るばかりだ。
4位はポイント5位でポコノ入りしたウィル・パワー(チーム・ペンスキー)、5位はカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)で、佐藤琢磨(AJフォイト)が6位でゴールした。
「レース終盤に2番手につけ、前はルーキーの(ギャビ―)チャベスだったから、勝てると思ってました。しかし、最後のピットストップでリヤのダウンフォースを下げるセッティング変更ができなかった。みんな一斉にピットインしたので、そこでタイムロスをすれば順位を大きく下げてチャンスを失ってしまうとチームが判断したからでした」
「コースに戻り、(セージ)カラムのアクシデントによる長いイエローの後にリスタートが切られると、僕はストレートでトップに出ることができたんですが、チャベスにターン1までで抜き返され、その後にハンター-レイが来て、さらに何台かにパスされてしまいました。とても悔しいレースになりました。それでも、レースが終盤に入るまで最後尾を走る厳しい戦いになっていたので、トップ争いへと最終的に食い込んでいけたことは良かった」と琢磨は語った。
ポイントリーダーのモントーヤは辛抱強い戦いぶりで表彰台に上る3位フィニッシュ。35点を加算して開幕戦以来保ち続けているポイントトップの座を守った。それに対してポイントランキング2位のグラハム・レイホール(RLLR)は、前戦で優勝した勢いをポコノに持ち込んだというのに、93周目にクラッシュしてリタイアという最悪のパターンに陥ってしまった。リスタートでウィルソンのインサイドに飛び込んだレイホールだったが、その更にインへとトリスタン・ボーティエ(デイル・コイン・レーシング)が入って来て3ワイドとなり、最初にウィルソン、次にボーティエに接触してボーティエともどもアウトサイドの壁にクラッシュしたのだ。20位となった彼は10点しか加算ができず。ポイント2位の座は守ったものの、モントーヤとの差は9点から34点に広がった。
ランキング3位だったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)は上位陣で走り続けはしたものの、とうとう最後まで優勝争いに加わることはなかった。手にした結果は9位。稼げたのは22点で、モントーヤとの差は47点となった。
ピットでのスピンや、加速の失敗などがあって4位フィニッシュするにとどまったパワーも、モントーヤとの差は最終戦を残して59点から61点に広がった。
(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)