特徴あるツアーを打ち出し、年間450万人が利用する人気の旅行会社「クラブツーリズム」。店舗を持たない通販型旅行会社だが、この会社の真骨頂はマニアックな旅にある。
一般的な旅行会社は企画、販売と添乗員が分かれているが、ここの社員は添乗から手配、仕入れ、企画、プロモーションまで「旅のデザイナー」として一貫して担当するという。8月13日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、業界で独自の地位を築くクラブツーリズムの岡本邦夫会長に経営戦略を訊いた。
歴史チームの女性担当者は「城マニア」
1980年代、岡本氏は「近畿日本ツーリスト」の渋谷営業所で副所長をしていたが、成績が思わしくなかった。当時は修学旅行などの団体旅行に力を入れていたという。
そこで独自に新聞広告を打ち出し「旅の通販」を始めたところ、申し込み電話が殺到。それまでツアーの相談に出向くのがおっくうだったシニア世代の心をがっちりつかんだのだ。岡本氏は「お客とダイレクトにつながる」ビジネスの時代を確信した。
「新聞広告だとダイレクトにお客様と結びつける。そういうビジネスのあり方がこれから大事だ」
さらにお客とのつながりを深めるために、旅行カタログ「旅の友」を無料配布。1993年には客から配達員を募るシステムを確立した。こうして急成長を遂げ、2004年に近畿日本ツーリストからの独立分離を果たす。
クラブツーリズムの特徴は、行先別ではなくテーマごとにツアーを企画していること。旅の企画担当も地域別ではなく「写真」「歴史」「登山」「社交ダンス」「スケッチ」など30ものテーマ別に分かれ、お客の嗜好に対応している。
「歴史」チームの若林真美さんは、城マニアだ。日本中の城を愛し、知名度の低い城までツアーに組み込んでいる。たとえば三重県にある赤木城には石垣しかないが、独特の魅力があるそうだ。
「石の積み方ひとつでも、地方による違いや時代を感じることができる」
「お客が何に喜んでいるか」添乗によって分かるようになる
入社6年目の桐本さんは「シリーズ」企画を担当している。たとえば富士山の裾野1周を17回かけて散策するツアーは、すべて参加してひとつの旅が完成する。何度も顔を合わせるうちに、旅の仲間が増えることもツアーの魅力だ。
番組で訪れた日は雨だったが、「森が水墨画のよう」と雨なりの魅力があることを女性客が教えてくれた。桐野さんは同行することでお客のニーズが見えてくると語る。
「実際に歩いて話をしていると、お客さんが何に喜んでいるか分かってくる。それを次のツアーに生かせるようにします」
社員が自分が企画したツアーの添乗業務を必ず経験しなくてはならない理由について村上龍が質問すると、岡本氏はこう答えた。
「何のために旅行会社に入ったのかと考えると、お客に喜んでもらうため。そのためには添乗は欠かせない」
自身の経験から、高い料金の料理を出せは客が満足するとは限らないことや、食事手配の順番など「添乗はいろいろ勉強になる」と現場経験の大切さを語った。
そのような仕事を通じて、総合的な能力と現場での学びを踏まえた成長が常に求められる。ハードルは高いと思うが、自分が好きなテーマの旅でお客さんを喜ばせることができれば、こんなに楽しい仕事はなかなかないだろう。(ライター:okei)
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