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DAOKOが初ワンマンで見せた、育った街=渋谷との繋がり 振り幅の広い新曲群も多数披露

2015年08月23日 17:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『DAOKO THE LIVE 2』の様子。

 DAOKOが、8月17日に東京・WWWにて初のワンマンライブ『DAOKO THE LIVE 2』を行った。


 チケットが早々に売り切れとなった同公演。会場にはいまもなお“正体不明”の彼女を一目見ようと、多くの観客が訪れていた。冒頭、DAOKOはバンドメンバーとともに、透明な紗幕越しに見えるステージへ登場。早速メジャーデビューアルバム『DAOKO』のラストナンバーであり、無機質な打ち込み音とハードなギターが独特の温度感を生み出す、片寄明人(GREAT3)共作の「高い壁には幾千のドア」でライブは幕を開けた。


 その後、DAOKOは「今日はスペシャルな仲間たちとめいっぱい楽しみたいと思いますのでよろしくお願いします」と挨拶し、小島英也(ORESAMA)と共作した「かけてあげる」を披露。スクリーンにはバンドを覆うように同曲の映像が投射され、ベースのグル―ヴィーなスラップベースが際立つバンド演奏と合わせ、楽曲の臨場感を高めていた。続けて同じく小島が共作で参加した、ギターのカッティングからスタートする3曲目「ぼく」では、マンガのコマ割り風のイラストがスクリーンに映し出され、<メジャーになった 何か変わったか エラーエラーエラー 狙って売れるなら苦労しないだろ?>という歌詞がより意味のあるものに見えた。


 PARKGOLFと共作した、『DAOKO』内で最もポップといえる「ミュージック」では、DAOKOがネオンサイン風の映像に合わせ、キュートなウィスパーボイスで同曲を歌い上げた。MCでは、少し興奮気味に「初ワンマン、あったかいですね」と話すと、そのテンションをさらに加速させるように、性急なビートと弾きっぷりの良いカッティングギターが前に出る「一番星」を披露。DAOKOもそれに呼応するかのように、少し熱量のこもった声でラップを繰り出した。


 と、ここでDAOKOは「気分を変えて、インディーズ時代の曲を初めてバンドでやります」と宣言。まずはオレンジ色に照らされたステージの上で「夕暮れパラレリズム」を振り付きで歌うと、続いて「ニルバーナ」を披露した。また、「BOY」では、スタンドからマイクを外し、情感たっぷりに歌いあげる姿が新鮮だった。


 ここでDAOKOがステージを去ると、スクリーンには10月21日にシングル『ShibuyaK / さみしいかみさま』をリリースする旨や、アニメ「ME!ME!ME!」でDAOKOとコラボレートした吉崎響監督と「日本アニメ(ーター)見本市」で再びタッグを組むことを発表する内容が映し出された。その後、DAOKOはステージへ戻り、同アニメに起用された新曲「さみしいかみさま」と「ゆめみてたのあたし」を披露。DAOKOのレパートリー内ではダンス色強めのトラックが印象的な「さみしいかみさま」と、最小限の音数に乗せ、<みんなに出会えてよかった あたし、一人じゃないんだ>とポエトリーリーディングで歌う「ゆめみてたのあたし」という、毛色の違う2曲を歌い上げた。


 その後、Miliが手掛けた「ないものねだり」、國本怜(N.O.R.K)と共作した「JK」と続けたあと、MCでDAOKOは「渋谷についての曲。人やものがいっぱいあって、混乱してしまった様子を曲にしました」とボカロPのきくおと共作した「ゆめうつつ」を披露。同曲が終わり、バンドメンバーがステージ上へ戻ると、DAOKOは可愛らしく「バンドが揃って安心した。たまに調子が悪い時は周りの人やもの全てが嫌になる時があって。その感情は邪悪だけど、私は音楽に昇華できる。いつも支えてくれる音楽とバンドメンバー、皆さんとスタッフに感謝を込めて」と語り、PARKGOLFと共作した「嫌」を情感たっぷりに歌い上げた。


 本編最後の楽曲は、DAOKOが演奏前に「エモーショナルな感じになってる。そんなあなたたちにおくる、私からの応援歌です」と話した「きみ」。様々な吹き出しで歌詞をスクリーンに映し出しながら、疾走感のあるサビを軽快にラップで乗りこなし、DAOKOはステージを後にした。


 その後、観客のアンコールを受けて再度ステージへと上がったDAOKOは「こうなることは決まっていたわけですね(笑)。一人で喋ってるのが恥ずかしくなってきた、もっとクールなはずだったんですが…」と、初ワンマンでテンションの制御が難しいことを明かし、続けて「新しいシングルのリード曲は“アゲー!”な曲。ちなみに、『ShibuyaK』の『K』は交差点の『K』です」と前置きして同曲を披露。90年代渋谷系を彷彿とさせるJ-POPサウンドは、これまでになかったDAOKOの新境地といってもいいだろう。自らが育った街・渋谷に建つ名所を列挙しながら<何でもあるけど何にもないな この街じゃなくて私が>と空虚を歌うDAOKOと渋谷の繋がりは、新たな代表曲となるであろう同曲をもって、ますます強くなっていくことを予感させた。


 バンドメンバーの紹介を終えたのち、「まだこれからなので、ずっと一緒に頑張りたい」と語って最後に演奏したのは、「水星」。DAOKOの名をポップシーンへ一気に広めた同曲で、彼女は記念すべき一日を締めくくった。


 様々な振り幅を見せた楽曲群で、より広い地平へ足を踏み入れることを予感させたこの日のパフォーマンス。DAOKOは新たなポップスの担い手として、これからも躍進を続けるだろうし、10月のシングルに収録される3曲は、その入り口として大いに機能することを確信できる一夜だった。


(取材・文=中村拓海)