スーパーフォーミュラの2015年シーズン折り返しの一戦となる第4戦もてぎの予選は、ポールポジションの石浦宏明と2番手の野尻智紀の差がわずか100分の2秒という僅差で決着した。そして、そのふたりと同じく1分32秒台をマークして3番手につけたのは、今シーズンからシリーズに参戦している小林可夢偉だった。見た目としては今回も僅差の勝負となった予選トップ3だったが、そこに至るアプローチは、トップ2のふたりと3番手の可夢偉とでは異なるものだった。
今回の予選で、石浦と野尻は予選が進んでいくにつれてフィーリングがよくなることを予想。Q2、Q3とフィーリングの向上を感じながらアタックし、予選トップ2を獲得した。一方、ふたりと同じく1分32秒台をマークして3番手につけた可夢偉のアタックは、本人にとって「まだハマってない感はある」ものとなった。
「(アタックで)もっといきたかったのですが、いったらどうなるか分からない。コースに対して、自分が本当にそこでいっていいのかいけないのかという経験がなく、予選をどうアタックすればいいのか分からないんですよね。日本のコースを走り切っているドライバーは、予選一発で『ここはいける』、『ここはいかない方がいい』とかそういう経験がある。それがあるのとないのとでは、予選でタイムを出せるか出せないかはすごく大きい気がします」
「石浦選手などはQ3で(タイムを)上げてきたりしますが、それは僕にはまだできないレベル。そこまでいくには、次のレイヤー(上積み)を自分で見つけていかなくてはならない」
可夢偉は今回の予選後、スーパーフォーミュラの戦いについて「ある意味ハイレベルな戦い」だと語った。
「ドライバーも、スーパーフォーミュラだけでなくスーパーGTだったりいろいろなカテゴリーで日本のコースをとにかく走っている人たち。そういう意味では、F1に乗っている人たちよりも引き出しが多い人がたくさんいる」
そしてそれは、マシンのセットアップについても同様だ。可夢偉は予選トップ3会見で開口一番、「朝の時点では、おそらくQ1も通らないだろうと思っていたので、何が起こって自分がここにいるのか分かっていない状況です」と振り返った。予選こそ3番手につけた可夢偉だったが、午前のフリー走行ではトップから1.5秒以上離されての16番手。もてぎでの走行は12年ぶりとなるため、朝のフリー走行では「クルマが悪いのか、自分が悪いのかもわからない」状況だった。
セットアップの進め方について可夢偉は「このコースはこれが合っているとか合っていないとか、ここのコーナーを基準にバランスを作っていくといったことは、結果的にレースが終わってから気付くことになる。経験という部分がすごく大きいのですが、今はなんとかごまかしごまかし合わせている状態」と話す。
ただ今回は、フリー走行での「ウンともスンともいかないくらい遅い」状態を打破するため、直後のサーキットサファリまでにセッティングを大きく変更。「サファリではタイムアタックをしていないので正直なところは分からなかったですが、多分こっちのほうがいいかなというのでさらにそこから進めました」と、“嗅覚”とも言える感覚でセットアップの方向性を見極めた。
その結果、予選では自身が驚くほどのタイムをマークするクルマを作り上げ、攻め切れない中でも予選3番手を獲得。キャリアの早い段階で海外へと挑戦していった可夢偉にとって、日本のサーキットでのレースは鈴鹿を除いて“アウェイ”と言える状況だが、今回はそんな中でも好結果を残してみせた。