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ポルノグラフィティが最新作で挑んだ“らしさ”と“新しさ”――「オー!リバル」等から検証

2015年08月21日 21:11  リアルサウンド

リアルサウンド

ポルノグラフィティ

 ポルノグラフィティが約3年5か月ぶりとなるニューアルバム『RHINOCEROS』をリリースした。エッジの効いたロックサウンドとともに他者との殺伐とした関係性を描いた攻撃的なナンバー「ANGRY BIRD」、カントリーミュージックのテイストを取り入れた「Hey Mama」、エモ~ヘビィロックの流れを汲んだ「バベルの風」など、幅広いタイプの楽曲が取り揃えられた本作、その起点となったのが、シングル曲「オー!リバル」だ。


 映画『名探偵コナン 業火の向日葵』の主題歌として制作された「オー!リバル」は、スパニッシュ風のギター、憂いと開放感を共存させたメロディが印象的なナンバー。ポルノグラフィティの代表曲である「サウダージ」(2000年)「アゲハ蝶」(2001年)などの系譜に連なる、ラテン・テイストを軸にした楽曲だ。作曲は岡野昭仁。「サウダージ」「アゲハ蝶」はak.homma(本間昭光)の作曲だが、おそらく岡野は自らの手で“ポルノグラフィティのパブリックイメージに沿った、新たな代表曲”を作り出そうとしたのかもしれない。


 デビュー当初から本間昭光氏がプロデューサーとして関わり「アポロ」「ミュージック・アワー」「ハネウマライダー」などのヒット曲を生み出してきた彼ら。岡野のボーカル、新藤晴一の作詞・ギターを活かしながら、本間氏のプロデュースワークのもと、ロックテイストのJ-POPというスタイルを確立してきた。そう考えると、岡野が自らラテン・テイストの楽曲に挑んだことはとても大きな意味があると思う。


 前作『PANORAMA PORNO』(2012年)以降の音楽シーンの変化が、彼らの音楽観に何かしらの影響を与えていることも想像に難くない。この3年半の間に(実際は10年くらい前からだが)、日本のメジャーシーンはアイドルソング、アニソンの優位が決定的になったと言っていい。クラムボン・ミト氏の「楽曲の強度を上げないと戦えない」という発言に示されているように、音楽をビジネスとして考える以上、楽曲自体のスペックを上げることは必要不可欠。だからこそ岡野と新藤は、「オー!リバル」をコアなファン以外のリスナーに届く楽曲として成立させようとしたのではないか。実際、「オー!リバル」にはEDMの要素なども取り入れられるなど、現在のシーンに適応したサウンドメイクが施されていて、“らしさ”と“新しさ”がバランスよく共存する楽曲に仕上がっていると思う。また、Perfume、flumpool、BEGIN、高橋優、WEAVERなども出演した大型イベント「Amuse Fes 2015 BBQ in つま恋」でもポルノグラフィティは、自らのステージの本編ラストで「オー!リバル」を披露。そこにも、この曲にかける彼らの思いが示されているはずだ。


 アルバム『RHINOCEROS』を通して新たな代表曲を作るという意思は、リードトラック「Ohhh!!! HANABI」にも共通している。わかりやすい夏のモチーフである“花火”をテーマにした「Ohhh!!! HANABI」の特徴は、徹底してポップに振り切っていることだろう。もちろんここには、作曲者の岡野の“いまのポルノグラフィティには、より間口の広いポップチューンが必要だ”という冷静な判断が反映されているのだと思う。新藤の作詞においてもキャッチーな言葉が並び、ファンがタオルを振り回したりライブでの弾けっぷりも想像できる。また、エッジの効いたギターサウンドとトロピカルなビートを融合させたアレンジは、シライシ紗トリの手によるもの。SMAP、嵐、乃木坂46などの楽曲を手掛けてきたヒットメイカーとのコラボレーションによって彼らは、この曲に現代的なポップ感を与えることに成功している。


 コアなファンとの安定した関係だけに留まらず、現在のシーンに対応することで新たなリスナーを獲得すべく、より開かれたポップネスへと舵を切ったポルノグラフィティ。本作『RHINOCEROS』は彼らのキャリアにとっても、ひとつの分岐点になりそうだ。


(文=森朋之)