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【小町の法律相談】 表示のない私有地を散歩中にケガ、所有者に賠償請求できる?

2015年08月21日 09:01  弁護士ドットコム

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(この質問は、「Yomiuri Online」の人気企画「発言小町」に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部が再構成したものです)


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犬と散歩中、私道で怪我を負ってしまった場合、その所有者に対して賠償請求できるのでしょうか。被害者に落ち度がある場合には、賠償額が減らされる可能性もあるようです。YOMIURI ONLINEの掲示板「発言小町」に寄せられた質問について、富永洋一弁護士に聞きました。

Q. 表示のない私有地を散歩中にケガ、所有者に賠償請求できる?


犬と散歩をしていたところ、側道のコンクリート壁から鋭利な金具がいくつも突出している個所があり、それに気付かず接触してしまい、左足のふくらはぎを8針縫うケガをしました。


町役場に報告すると、その側道は私有地(私道)とのことで、金具は撤去され、「ここは私有地です」という看板も立てられました。


しかし、側道の所有者から謝罪はなく、医療費はおろか、私に対する賠償はいっさいありません。


あれから半年以上経ちましたが、左足には醜い傷跡が残っています。


ケガの治療のため勤務先をたびたび早退しなければならず、業務に支障を来したことなどを含め、賠償請求をしたいと思いますが、どうでしょうか?


(この記事はYOMIURI ONLINE「大手小町」とのタイアップ企画です。質問は大手小町の掲示板「発言小町」に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部が再構成したものです。トピ「表示のない私有地でケガ、賠償請求出来ますか?」はこちら http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2015/0717/721868.htm)


A. 「私道でも賠償責任が認められる場合があります」


民法717条1項は、「土地の工作物の設置または保存に瑕疵(かし)があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う」として、いわゆる「工作物責任」について規定しています。


まず、コンクリート壁は、判例上も、「土地の工作物」に当たります。


そして、「瑕疵」(かし)とは、「工作物が通常有すべき安全性を欠いていること」をいいます。


私道であっても、建築基準法による道路位置指定を受けたものや、みなし指定道路(幅員4メートル未満でも行政の指定で建築基準法上の道路とみなされる、いわゆる「42条2項道路」)など、隣接者等が日常的に通行している側道であれば、側道に設置されたコンクリート壁から鋭利な金具がいくつも突出しているような危険な擁壁について、管理者が防護柵を設置するなどの危険回避の措置を講じていなければ、「通常有すべき安全性」を欠いているものとして「瑕疵」といえるでしょう。


もし、工作物責任が認められる場合には、コンクリート壁の管理者は、ケガの治療費や通院交通費だけでなく、ケガの影響で仕事を休んだ分の休業損害や通院期間に応じた慰謝料なども支払わなければなりません。


もっとも、コンクリート壁に接触するような歩き方をしたなど、被害者にも落ち度がある場合には、「過失相殺」といって、賠償額の何割かを減らされる可能性があります。




【取材協力弁護士】
富永 洋一(とみなが・よういち)弁護士
東京大学法学部卒業。平成15年に弁護士登録。所属事務所は佐賀市にあり、弁護士2名で構成。交通事故、離婚問題、債務整理、相続、労働事件、消費者問題等を取り扱っている。

事務所名:ありあけ法律事務所
事務所URL:http://ariakelaw-saga.com/