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細田守とミスチル桜井、創作について語り合う 細田「価値観をひっくり返すことに醍醐味がある」

2015年08月20日 16:41  リアルサウンド

リアルサウンド

『NEWS ZERO』公式FACEBOOKページより

 公開中の『バケモノの子』監督・細田守と、同映画の主題歌を担当したMr.Childrenの桜井和寿の対談が、19日放送の『NEWS ZERO』(日本テレビ)で放送された。たがいに制作スタイルや作品づくりの苦悩、自分の子どもとの親子関係について語り合い、「七転八倒ですよね」(細田)、「いいものが作れなくなることへの怖さはすごくある」(桜井)などの本音も飛び出した。


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 2人はこの日が初対面で、まずは細田が作品づくりについて「どのように作っていって、どういうところが苦しいのか」と質問。桜井は「できるだけ作るということから遠いところに自分の意識を置くほうがよくて。自転車乗っているときとかお風呂に入っているとき、まったく何も余計なことを考えていないときに、ふとメロディーが流れ出すんですよね」と制作スタイルを語った。また、「夢占いってあるじゃないですか。見た夢が人間の潜在意識のなかでどういう意味を持つのかがわかる占い。あれとすごく似ているかもしれないです」と自己分析した。歌詞は最初の1行から順番に書き始め、「2番ではこんなことを言って、最後のサビではこんなことを言い切る、とかは考えずにやっている」とのこと。


 細田は「いやあ、それはすごいですね」と感心した様子を見せ、話題はアニメーションづくりの苦悩へ。『バケモノの子』の絵コンテは、細田が1人で約9ヶ月かけて仕上げたものだ。「自分の志に対して、なかなか自分の実際の作業が追いつかないことが多くて、それでもう七転八倒ですよね。毎回、あまりにも何も出てこない自分に嫌気がさすくらい」と語り、"何でもないときにパッと思いつく"という桜井に対して「いいなぁって......」と、羨ましさを覚えたことを明かし、桜井を笑わせた。


 桜井は、細田アニメの"景色"について質問。「細田さんの映画は、日本特有の田舎の景色とかをすごく大事にしていらっしゃるなのかなと。あと、日常や生活っていうものを」と感想を述べ、そうしたイメージがどこから生まれるのかを問う。すると細田は「若いころは自分が好きな映画監督の作品や、本、美術作品、歴史上の名作などから、すごく大きな刺激を受けていたと思うんですよ」と答えるが、しかし、現在2歳半になる息子が生まれてからは、もっと身近なものに影響を受けるようになったという。『バケモノの子』が生まれたことも、息子の存在がきっかけだったそうだ。


 一方の桜井は、親子関係について「あまり決まりごとは決めないようにしている。(父親として)こうあるべき、とか。できれば子どもの成長と共に、自分の価値観もグラグラ変わりながら、一緒に変わっていきたいなと思う」との意見。また、たとえば子どもが通う幼稚園にてキャンプが開催されると、子どもが緊張してイライラすることがあるといい、「些細な出来事で心は変わっていくから、(その変化を)見逃さないように」しているという心がけを述べた。


 ここでキャスターが桜井に「作品を作るときに大切にしていること」を問いかける。桜井の理想は「まず日常があること。リスナーの人たちの身近であること」が第一で、その上で「既成概念みたいなものを、どこかで変えられる力を持った視点を探してはいます」と明かした。細田も「表現というのは、価値観を鮮やかにひっくり返すことに醍醐味がありますよね」と同意。「それがうまくいったら痛快だろうけど、なかなかそういうふうにならない」と苦笑しつつも、「1曲を聴いたあとや、映画を観たあとに、ぜんぜん世界が違って見えるみたいになると、いいんですけどね」と、クリエイターとしての志を述べた。


 また桜井にとって、ものづくりに対するプレッシャーは「ヒットし続けなくてはならない」ということではなく、「いいものが作れなることへの怖さ」だという。世の中が求めるものから自分がズレているかもしれない、という危機感を常に抱えていると語り、細田も頷いた。


 アニメーション/音楽とジャンルは違うが、ともに高い人気を誇る2人。大きな影響力を持つクリエイターとしての"産みの苦しみ"がうかがえる対談だった。(岩倉マコ)