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悪質な「さおだけ屋」3本で13万円、切ったら返品ダメ・・・立ち向かう方法は?

2015年08月20日 12:11  弁護士ドットコム

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「たーけやー、さおだけー」。そんな掛け声で知られる物干しざおの移動販売で、高額品を購入させられるなどの被害が急増していることが発表された。


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発表した国民生活センターによると、物干しざお等の購入に関する相談件数は、2014年度は524件で、6年前の約6倍に増えた。そのうち約9割が、自動車に物干しざお等を陳列して巡回する移動販売だ。高齢者を中心に、高額な代金を請求され、支払ってしまうケースが増加しているという。



相談内容としては、80代女性の「商品を選んでいないのに勝手に切って高額な請求をされ、領収書も渡してくれない」といった事例や、70代女性の「(さおを)切ってしまったから返品はできないと言われ、仕方なく払ったが納得できない」といった事例が報告されていた。この70代女性は、3本で13万円を業者から請求され、結局9万円を支払ったという。



こうした業者にうっかり呼びかけてしまい、高額の請求をされた場合、どのように対処すればいいのだろうか。いったん、移動販売の車を呼び止めて、購入の意思を伝えてしまったら、購入するしかないのだろうか。また、「(さおを)切ってしまったから返品はできない」という業者の言い分は受け入れるしかないのか。消費者問題に詳しい正木健司弁護士に聞いた。



●悪質な場合は「クーリングオフ」が主張できる


「こうした業者を万一呼びとめてしまい、予想外に高額な請求をされた場合、おかしいと思った時点で、お金を払うのを止めてください。現金を払ってしまった時点で、業者は行方をくらまし、お金はほとんど戻ってきません。



大切なのは、購入前にしっかり商品と金額を確認することです。また、当然ながら、業者の身元(連絡先や住所等)も十分確認し、車のナンバーも記録しておいてください」



こうした販売方法に法的問題はないのだろうか。



「さおだけ屋の移動販売は、特定商取引法の訪問販売にあたります。業者は、契約内容を記載した書面交付義務を負い、購入者はクーリングオフができる可能性があります。



契約書面を交付していない場合はもちろん、記載事項に不備があれば、クーリングオフの期間は進行しません。



そのため、完全な書面が交付されない限り、クーリングオフすることができます」



●「さおを切ったから返品不可」の主張は無視してOK


自分から業者を呼び止めて、購入の意思を伝えてしまった場合でも、クーリングオフできるのだろうか。



「その場合でも、書面が交付されていない限り、クーリングオフはできます。



そもそも、法外な値段で物干しざおを売りつけることは、法律上許容されません。契約自体に瑕疵があるとして、お金の支払いを拒むことができます」



なかには「さおを切ってしまったから返品はできない」という業者もいるようだが、そのような言い分は通用するのだろうか。



「消費者を困惑させる方便にすぎません。



業者にすごまれたような場合は、近所や警察に助けを求めてください。そもそも、予想外に高額であったり、法外な値段であれば、契約自体の無効・取消を主張できます。



もっとも、悪質な業者は連絡先を明らかにせず、領収書も発行しないまま、巧妙な手口で売りつけるでしょうから、事後的な被害救済は困難なケースも多いかと思います。



被害予防こそが重要です。こうした被害を未然に防ぐには、高齢者に対する注意喚起や、地域の見守り・連携等が一層求められると思います」



正木弁護士はこのように述べていた。



(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
正木 健司(まさき・けんじ)弁護士
先物取引、証券取引、デリバティブ取引などの投資被害事件、金融商品取引訴訟を多数取り扱う。名古屋先物証券問題研究会事務局長。先物取引被害全国研究会幹事。全国証券問題研究会幹事。愛知大学法科大学院非常勤講師(消費者法)。愛知県弁護士会消費者委員会委員。K&A投資被害弁護団事務局長。
事務所名:名城法律事務所
事務所URL:http://www.meijo-law.jp/