2015年08月19日 20:01 弁護士ドットコム
安保法案に反対する若者たちを「自分中心」「極端な利己的考え」とツイッターで批判して物議をかもした自民党の武藤貴也衆議院議員(滋賀4区)に、金銭スキャンダルが持ち上がった。上場前の「未公開株」をめぐって知人とトラブルになっていると、8月19日発売の週刊文春が報じたのだ。武藤議員は19日、自民党に離党届を提出し、受理された。
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週刊文春によると、武藤議員は昨年10月、ソフトウェア会社の未公開株を「国会議員枠で買える」と知人に呼びかけ、この知人を通じて23人から約4100万円を集めた。金は武藤議員の政策秘書の口座に振り込まれた。しかし、実際には株は購入されず、出資者が返金を求めたが、武藤議員の秘書が一部を別の借金返済にあてたことから、現在6人に約700万円が返還されていない状態だという。
週刊文春は、武藤議員が昨年10月29日、知人に対してLINEで送ったものとして、次のようなメッセージを紹介した。
「来月新規公開株の取引の話があり、最低でも2倍になると言われています。内々で俺に取引を持ちかけてきているのだけど元手がありません」
「あとこの案件はクローズだからね。正直証券会社からもうちが国会議員のために枠を抑えてるのとが一般に知れたら大変だと言っています。その辺呉々も注意して下さい」
武藤議員は、週刊文春の取材に対し、そもそもの発端は、知人らに事業資金として累計1億円を貸し付けており、それが返済されないことだったと説明したという。ただ、武藤議員の2015年3月18日付けの資産等報告書の貸し付け金欄には「該当無し」と記載されている。
武藤議員はいまのところ、記事内容を否定していないが、仮にこの報道内容のようなことが起きたのだとしたら、法的にはどんな問題が考えられるだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。
「週刊文春の記事に書かれていることが事実かどうかは分かりませんので,あくまで仮定の話としてお答えします。
もし、武藤議員の政策秘書が、新規公開株の購入のために投資家から集めた資金を、他の用途に流用したのだとしたら、『横領罪』が成立する可能性があります。
ただし、武藤議員が流用に関与していない場合には、あくまで秘書の問題となります」
「次に、もし『証券会社が新規公開株の国会議員枠を押さえている』という武藤議員の説明が嘘であり、武藤議員も嘘と認識していて、秘書と共謀して資金を集めたのであれば、詐欺罪が成立する可能性があります。
ただ、今回の記事は、秘書が流用したという話ですので、武藤議員自身が一連の行為によって、どのような利益を得たというのかは不明です」
「さらに、万が一、『証券会社が新規公開株の国会議員枠を押さえている』という話が本当だったのであれば、リクルート事件と同様に、贈収賄の問題が出てきます。ただし、贈収賄が成立するためには、『お金と引き替えに便宜を図ってもらおう』といった『賄賂性の認識』が必要です」
ただし、この証券会社は、「国会議員枠」について存在を否定している。
「もし、武藤議員個人が知人らに事業資金として累計1億円を貸し付けており、それが返済されていなかった、というのが事実である場合には、国会議員資産等公開法で定められている資産等報告書に当該貸付金についての記載がないということですので、同法違反の問題も生じます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
秋山 直人(あきやま・なおと)弁護士
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は溜池山王にあり、弁護士3名で構成。原発事故・交通事故等の各種損害賠償請求、企業法務、債務整理、契約紛争、離婚・相続、不動産関連、労働事件、消費者問題等を取り扱っている。
事務所名:たつき総合法律事務所
事務所URL:http://tatsuki-law.com