アパレル大手のワールドは8月12日、7月から募集していた希望退職制度に453人の応募があったことを明らかにした。この数は同社の全従業員1786人の25.3%、つまり4人に1人にあたる。
同社は1959年に創業。「タケオキクチ」「INDIVI」「aquagirl」などの有名ブランドを展開してきた同社だが、近年は業績が悪化。2015年3月期決算の黒字は3年ぶりだった。口コミサイトのキャリコネに寄せられた書き込みから、会社の内情を探ってみる。
「仕事をする振りをすれば会社が守ってくれる」文化に呆れる
利用者から多くの支持を集めていたのは、2014年に投稿された40代前半男性の投稿だ。ワールドの社員は「過去の日本アパレルの雄としてのプライド」を抱えているものの、「過去の成功体験から脱することができてない」と指摘している。
有価証券報告書によれば、ワールド全体の従業員の平均年齢は約44歳。投稿者もほぼその世代だ。しかし周囲の社員は50歳と高く、給与が高い人ほど生産性が低いと不満気だ。
「仕事している振りしていれば、後は会社の制度と同僚が守ってくれるという異常な状況を、素晴らしい文化と思い込んでいる人多数」
「昔はこんな会社じゃなかったのになぁ、と他人事のように愚痴る人ばかりで、自ら変えようという人はいない」
今回の希望退職の対象は、9月20日の退職日に40歳以上になる正社員。これに定年退職後に再雇用契約を結んだ60歳以上の社員が加わる。投稿者自身も対象だが全社的にはまだ中堅で、定年まで20年近くある。上の世代の「働かないおじさん」たちが逃げ切った様子を、苦々しく思っているのかもしれない。
専門職は契約社員。裁量労働制でも「朝礼あり」
一般的にアパレル企業では、デザイナーなどのクリエイティブ業務を担う専門職が高待遇で迎えられる印象があるが、ワールドではそうではなかったようだ。2015年の口コミでは、契約社員の20代後半の女性がこう不満を漏らしている。
「仕事内容や勤務時間に対して給与が全く見あっていない。特にデザイナーやパタンナーなど専門職は全員契約社員のため、昇給はほぼなしと言える」
企業の競争力を担う専門職を正社員にせず、契約社員でまかなっている。そのうえ多くの仕事を任せながら残業代を出さないという。正社員の上司は仕事量をマネジメントしてくれない状況の中で、辞めていく若手が非常に多いとのことだ。
2014年の口コミでも、契約社員の30代後半の女性がクリエイティブの専門職の問題を指摘している。彼らには裁量労働制が導入されているのにもかかわらず、朝礼があり定例会議も朝に設定されている。これでは「契約社員を安く使うことが目的の裁量労働制」と言われても仕方がないだろう。
会社の売り上げを確保するため、ほぼ毎月「ファミリーセール」が開催され、契約社員も土日に駆り出されることもあるという。きちんと代休はもらっているのだろうか。
みんしゅうには「若手はみな転職活動」の書き込み
就活生が利用する「みんなの就職活動日記」にも、社員によるものと思われる投稿がある。総合職として入社数年目という人は「社内は大変深刻な状況」と述べている。
早期退職について「約1200人→500人は削減目標」で「削減できない分は販売外業務に異動させ、給与形態を下げて退職に持って行く方向」と推測。そのような状況でありながら、新卒採用を行う意味が分からないと思いを吐露している。
この口コミが投稿されたのは6月4日。ワールドが希望退職を発表した6月27日より前のものだ。この人物は6月17日にも続けて投稿。他の若手とともに、本人も転職活動中と明かした。若手が活躍する機会はないといい、「あと20、30年先にワールドがあるかどうかですね」と先行きを疑問視している。
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