米求職サイトのCareerCastが「2015年の最悪の仕事」を発表しました。紹介記事が最初に取り上げたのはタクシー運転手。なけなしの収入から車のリース料は引かれるし、深夜には危険も伴います。実際に乗客に殺される人もいます。
最近ではUberやLyftなど新サービスが登場し、素人の「パートタイムドライバー」にお客を取られつつあります。しかしそれよりも最悪な仕事にランクされたのは、なんと「新聞記者」でした。200もの職種の収入や労働環境、ストレス、雇用見通しなどを比較した結果、最下位の200位になってしまったそうです。(文:夢野響子)
2020年までの推定成長率はマイナス13%
確かにここ数年間、新聞業界はまさに危機に瀕しています。オンラインメディアの台頭で読者の印刷物離れが続き、広告収入が激減。日本では大手新聞社の社員は高給取りとして知られていますが、米国でのこの仕事の平均年収は3万6267ドル(約453万円)です。
際立っているのは「将来の成長見通し」の低さで、2020年までの推定成長率はマイナス13.33%。これは199位の「木こり」を更に下回る数値で、現在でもレイオフ(一時解雇)が日常茶飯事になっています。
今では多くの「元記者」たちが、自分のスキルを広報などより有望で長期的な見通しを持つ分野に見出して転職しています。Virginia Pilot誌のジャーナリストだったノラ・ファイヤストーンさんもその一人です。
「いまトップで活躍しているPR・メディア関係者やコンテンツライターには、元ジャーナリストや記者が多いと思います。私たちは人物や出来事の中から、価値を見出す術を知っているのですから」
2003年に大学を卒業して新聞業界に飛び込み、Boston Heraldでコラムを書くまでになったエリン・ヘイスさんも、仕事の行き詰まりから最近Media Bossという広告会社を立ち上げました。キャリアチェンジを志す新聞記者に、ジャーナリスト経験を通じて身につけたものを役立てるようアドバイスしています。
「物事を語る能力や、締切までにキチンと記事を書き上げる技術は、広報やマーケティングに役立つことを忘れないでください」
自分のスキルの中から「特に使いたいもの」に焦点当てる
最悪ランクの仕事には新聞記者(200位)の他に、兵士(198位)や消防士(192位)など市民の生活を支えるのに欠かせない職業も多く含まれています。どれもストレスや危険の多い仕事です。
もっともコメント欄を見ると、仕事の良し悪しというのは極めて個人的なもので、数値や統計で一概に決められるものではないというのが多くの読者の意見のようです。好きなことややりがいのあることなら、多少の不都合は辛抱できる。大変なのはどこも同じなのだから、というのが一般的な感じ方ではないでしょうか。
ただし、いまは何の問題も感じていなくても、将来を見通すと先細りするおそれが高いという場合には、どこかで早めにキャリアチェンジをしておけば、後になって後悔することが少なくなります。米国での傾向は、日本でも本格化するかもしれません。
記事では、仕事に行き詰ったときには「これまでの仕事を通じて自分が築いてきたスキルを活かせるところへ転職すべき」と勧めます。その方向性をつかむには、自分のスキルを棚卸しし、その中で特に使いたいものに焦点を当てるのだそうです。
(参照)The Worst Jobs of 2015 (Career Cast)
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