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アイマス楽曲がチャート上位にランクイン マルチメディア戦略の強みを読む

2015年08月18日 20:21  リアルサウンド

リアルサウンド

CINDERELLA PROJECT

 今週のチャート、もちろん関ジャニ∞が28万枚というのはぶっちぎりの1位なわけですが、意外と2位以下のほうも味わいがあります。というのも、5位までがまがりなりにも3万枚売れているわけです。1位だけが突出して売れつつも他が1万枚程度ということも珍しくない昨今ですので、5位まで3万枚以上とか言われると「おお、景気回復!」とか思ってしまうわけです。まあ、10位まで数十万枚以上とかの時代もありましたが。忘れましょう。


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 さて、そんな中で気になる存在と言えば、この結果なら大健闘じゃないっすかという感じの5位カントリーガールズ、ではなくてその上にいるCINDERELLA PROJECTかなと思いました。アイドルアニメがやたら音楽チャートで幅をきかせるようになって久しいわけですが、この作品はその嚆矢とも言うべきアイマスことTHE IDOLM@STER系の楽曲であります。最近は特にラブライブ!さんと比べられることも多そうですが、どちらも楽曲の質は高く保ちつつも、ラブライブ!さんはよりイベント/ライブ方面を重視した今どきのライブアイドルらしさを志向している気がします。無論アイマス系もライブはやっているわけですが、楽曲の方向性も含めて物語性を補完する実直なキャラソンとしての側面が強い気がします。


 で、今回の曲はアニメ第2シーズンの主題歌なのですが、とりあえず前作の曲とイメージを一致させつつ、なんかもう、どうかするとかつてのアイマス曲「READY!!」あたりと彷彿とさせるアレンジの類似すらありまして、10年の歴史を重ねたアイマスならではの自信あふるる戦術を感じるところであります。おかげで1期の曲と比較されてダメ出しをくらうリスクが低減されているわけですが、比較して文句を言う人は言うでしょうし、むしろクオリティ的に似ているから文句を言うという人もいると思います。世の中むずかしいものです。


 ちなみに曲ではなく歌詞の方向性としては、やはりアニメの動向と重なるところの多い、それでいて抽象度の高い内容になっておりまして、曲を作る際にはまださほど全体像が見えていなかったであろうアニメ作品の内容にうまく沿わせるという意味では作詞は見事に成功しているように思います。この抽象度の高さが、最終的に本編キャラクターの悩みや成功とうまく噛み合えばいいのですが、本編のほうも今のところわりと曖昧なピンチが訪れているので、曲も本編もフワッとした感じでまとまったなあという感じで終わらないよう進めていただきたいところではあります。


 ただ売り上げ的には1期のオープニング曲が4.6万、今回が3.2万ということで、あれ……減っちゃってるという感じではあります。まあ順位的には同じ4位なので、人気の度合いをチャートの順位でしか見ていない世の人々をうまくゴマかすことは難しくないかもしれません。それはそれとして、やはりマンガの単行本と同じで、2巻より1巻のほうが売れるものなのでしょうか。本編1期の盛り上がりでファンは満足してしまわずに、2期も継続しての視聴・購入が望まれるところではあります。


 とはいえ、この作品の本体となっております携帯ゲームのほうは今もって熱心な課金勢に支えられて堅調ではありまして、ここでCDが売れようが売れまいが、まあ売れた方がいいに決まっているけどそれはそれとして、別に痛くはないわけです。このへんは意外と、握手会やチェキ会、ライブ物販などで経営を安定させつつCDリリースも継続して行うという長期化した地下アイドルなどと似たものが感じられるところです。今やこうした二次元ビジネスの維持費はスマホゲーで捻出するのが基本になってきましたので、皆さんもまずは課金に努めつつライブ参戦を目指し、CDもまあコレクターグッズとして買うのがいいのではないでしょうか。ましてアイマスの場合は三次元アイドルのAKBと同じだけの年数を積み重ねたという良さがあるわけで、これはポッと出のアイドル系アニメにはどんなに頑張っても真似できないところではあります。ちょうど、もともとこの作品が参照したハロプロのように「伝統あるアイマス勢」を売りにすることができるわけです。


 ただ、となるとメーカー的には、もっと売り上げを上げたいなら今どきのアニメみたくゴージャスなオマケによる付加価値の高いCDにしないとまずい時代になっていくかもしれません。(さやわか)