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『SUMMER SONIC 2015』を振り返る 柴那典「ポップミュージックの見取り図が描かれていた」

2015年08月18日 15:51  リアルサウンド

リアルサウンド

『SUMMER SONIC 2015』HPより

 8月15、16日に『SUMMER SONIC 2015』が今年も開催された。ヘッドライナーにケミカル・ブラザーズとファレル・ウィリアムスを迎え、さらにアリアナ・グランデ、ZEDD、ディアンジェロなど、海外ポップミュージックの最前線を象徴したラインナップが出揃った。


 先日リアルサウンドで、主催のクリエイティブマンプロダクション担当者へのインタビューを行った柴那典氏は、今年のSUMMER SONICについて「ポップミュージックのメインストリームを日本で生で体感できる場になっていた」と振り返る。


(関連:『SUMMER SONIC』今後のビジョンは? 「アジア最大の音楽見本市になっていけばいい」


「世界の音楽、ポップミュージックの見取り図が鮮明に描かれていました。サマソニの最大の強みであるラインナップの充実が実現し、今の音楽シーンを象徴するアーティストが全方位的に出演しているということが強く現れていました。そして、今回のようなラインナップが、ちゃんと若い世代の音楽ファンに共有されているということが非常に印象的でした。東京公演2日目でいうと、ZEDD、カーリー・レイ・ジェプセン、ファレル・ウィリアムスで20代のファンが盛り上がり、また、ディアンジェロのパフォーマンスも大歓声を集めていた。現在進行形の海外の音楽ファンの熱が日本でも同時代性をもって届いているということが実証されたと思います。アメリカとイギリスの最先端のポップミュージックカルチャーに対する興味とシンパシーと熱が、今もなお若い世代に存在している。それが明らかになったことが今年のサマソニの収穫ではないでしょうか」


 東京公演1日目のアリアナ・グランデとケミカル・ブラザーズの並びでは、世代を超えた現役アーティストがオーディエンスから同様に受け入れられる様子がうかがえた。


「アリアナ・グランデは存在感や歌唱力、マドンナなどの先人へのリスペクトを含めたステージングが素晴らしかったです。アメリカのポップミュージックの勢いと厚みのようなものを高いクオリティで表現していました。そしてその後に登場したケミカル・ブラザーズも印象的でした。先日リリースしたアルバムは、イギリスで6枚連続ナンバーワンの快挙。いわばダンスミュージック界のビートルズのような存在といえる彼らですが、EDM全盛の時代に自分たちの存在は決して過去のものではなく、アップデートされているということを伝えるようなパフォーマンスでしたし、若い世代の盛り上がりからもそれを感じました。世代もジャンルも異なるアーティストが立て続けに登場し、同様の盛り上がりを見せたという点が個人的なハイライトでした」


 また、今後活躍が期待されるアクトがブッキングされているというのもサマソニの魅力のひとつだが、今回、同氏はいくつかの新たなアーティストとの出会いを体験したという。


「偶然見ることができた台湾のクラウド・ルーは良かったですね。日本でも受け入れられそうな美声ポップマエストロといった印象のアーティストです。もう一つは、シンガポールのザ・スティーヴ・マクィーンズ。一言でいえば、ディアンジェロやJ・ディラの影響を受けたであろう、女性ボーカルにホーン隊を加えたネオソウル系のバンドです。日本でいうSuchmosなどと同時代性がある。どんなフェスでも新たな出会いがあるべきだと思っているのですが、サマソニの場合、それがアジアのポップミュージックとの出会いにある。少しマニアックなポイントかもしれませんが、見逃せないところかなと思います」


 サマソニでは毎年、アイランドステージでアジアの音楽を紹介する試みを行っている。


「どうやらサマソニは、アジア系の来場者が多いようです。会場の案内図を見ても、英語、中国語、韓国語が揃えてあります。そのような傾向からしても、先日のインタビューにあった『アジア最大の音楽見本市』という考え方は、とてもいい方向なのではないでしょうか。世界の最前線のポップミュージックを観れるその脇の小さなステージで、誰も知らない、でも『きっとディアンジェロの音楽に影響受けてるよね』というバンドを見ることができる。それがすごくいいことだなと思います。また、マジック・パワー(MP魔幻力量)も印象的でした。いわゆるイマジン・ドラゴンズのようなEDMとROCKを融合した台湾のバンド。今回このアジア勢3アーティストを知ることができたのはとても良かったです。特にマジック・パワー(MP魔幻力量)は、日本で人気になってしかるべきポテンシャルを持っているバンドですし、そういうところを今の段階でおさえているブッキング力もさすがだと思いました」


 各国の新たなポップミュージックを提示していくという姿勢が、実はアイランドステージのラインナップに詰まっているという。


「メインであるマリンステージの外周にあるアイランドステージは、来場者がふらっと歩いているときに目につくエリア。そこでアジア各国の音楽を鳴らしているところが、実は今のサマソニの試みの象徴的な部分なのかもしれません。アジア各国のバンドにとってサマソニが「憧れのフェス」になっていけば、それは素晴らしいことだと思います。そのようなたくさんの種が撒かれていたのが印象的でした」


 海外のヒットチャートを体感できるようなアーティストをはじめ、日本の音楽シーンでの多彩な顔ぶれや、アジアの注目アーティストが集結した今年のSUMMER SONICは、ポップミュージックの新たな楽しみ方を提案する要素がより強いものとなった。今回の開催は『音楽見本市』から一つ抜きん出た『ポップミュージック全体の見取り図を示す』役割を果たしたものとなったのではないだろうか。(久蔵千恵)