2015年08月18日 14:51 弁護士ドットコム
「次からはちゃんと病院に行って、診断書をもらってきて」。生理痛を理由に仕事を休む連絡したら、上司からそんなことを言われたという体験談が、ネット掲示板に投稿されて話題となった。
【関連記事:「同級生10人から性器を直接触られた」 性的マイノリティが受けた「暴力」の実態】
投稿者は生理が重く、辛いときは仕事を休むことがあるという。勤務先には生理休暇の制度がないため、有給休暇を利用して休んでいる。しかし、上司の要求にしたがって、生理痛の診断書を会社に提出することには抵抗を感じる。「拒否しても大丈夫でしょうか?」と書き込んでいた。
女性の書き込みに対しては、「当日いきなり休むのが続いたら『こいつさぼりじゃないか?』と上司が疑うのも当然」と上司の対応に理解を示す意見があった。一方で、「有給を使うなら休む理由は言う必要が無い」「診断書はプライバシー」など、提出は不要という意見も複数みられた。
生理による体調不良を理由に仕事を休む場合、診断書を会社に提出する必要はあるのだろうか。女性の労働問題に詳しい谷口真理弁護士に聞いた。
「生理休暇取得にあたって、診断書等を提出する法律上の義務はありません」
谷口弁護士はこのように述べる。
「労働基準法68条は、『使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない』と定めています。
『就業が著しく困難』という点について、特に証明は要件とされていません。生理休暇を取得したいときは、そのことを会社に申請さえすればいいわけです」
生理休暇を取得した場合、その分の給与はもらえるのだろうか。
「残念ながら、法律上、生理休暇が有給であることまでは保障されておらず、これを有給とするか無給とするかは、会社の自由です。
会社が有給の生理休暇制度を設けていない場合は、急病等の場合と同様に、事後申請により有給扱いを受け、仕事を休む方も少なくないようです」
生理休暇制度がなく、有給休暇を利用する場合、診断書などの提出は不要なのだろうか。
「会社によっては、診断書の提出が必要なケースも想定されます。
有給休暇を取得することは労働者の権利ですが、会社には時季変更権があるため、事前に申請することが原則になっています。事後申請を認めるかどうかは、本来は会社の自由です。
急病等で有給を利用できるのは、『事前申請ができない、やむを得ない理由がある』として事後申請が認められるからですが、これは会社による例外的な取扱いということになります。
ですから、事後申請の場合に、その理由を確認するために会社が就業規則等で診断書の提出など一定のルールを設けて周知させているケースでは、これに従う必要があります」
会社が有給の生理休暇制度を設けている場合でも、就業規則等で一定の場合に診断書の提出を義務付けるケースもあり、その場合もやはり提出する必要があります。
まとめると、生理休暇を取得するにあたり、仕事を休むためには申請だけで十分です。ただ、有給で生理休暇を取得する場合には、会社が診断書提出義務を就業規則などで設け、周知させているというようなケースでは、これに従う必要があります」
谷口弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
谷口 真理(たにぐち・まり)弁護士
第二東京弁護士会所属。一橋大学卒業後、司法試験に合格。
一般民事案件を中心に企業法務案件にも携わり、東京都千代田区内の2ヶ所の法律事務所での勤務を経て、桜花法律事務所を開設。著書「新・労働事件法律相談ガイドブック」(第二東京弁護士会・共著)
事務所名:桜花法律事務所
事務所URL:http://www.oukalaw.jp/02_about/index.html