2015年08月18日 11:41 弁護士ドットコム
養子にした幼い子を育てる場合に「育休」が取得できないのはおかしい――。厚生労働省は、「特別養子縁組」を結んだ里親が育児休業を取得できない現状を改めることを検討している。来年の通常国会に育児・介護休業法改正案を提出する方針であることが報じられた。
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報道によると、現在の制度では、実の子であれば、働く人が雇い主に申し出れば、原則として、子どもが1歳になるまで育休を取得できる。ところが、特別養子縁組の親は、正式な縁組を結ぶためは、里親として6か月以上の試験養育期間が必要なため、この間は育休がとることができない。
制度改正の対象となっている「特別養子縁組」とは、どんな制度なのだろうか。また、今回の制度改正をどう評価すべきなのか。家族の法律問題にくわしい高木由美子弁護士に聞いた。
「普通養子縁組では、税金対策や跡取りといった、必ずしも子の福祉のためとはいえない目的で、縁組みをするケースもみられます。
これに対して、特別養子縁組は、もっぱら子の福祉を目的としており、養子縁組によって『本当の親子』と同じ関係を作ろうとする制度です。
この点で大きな違いがあり、そのことで、要件や効果・手続にも違いが出てきます」
高木弁護士はこのように述べる。どんな違いがあるのだろう。
「主な違いとして、(1)年齢制限の有無(2)親子関係終了の有無(3)裁判所の関与の有無があげられます。
(1)普通養子縁組では、養子の年齢制限はありませんが、特別養子縁組では、養子になろうとする子の年齢は、6歳未満である必要があります。
(2)普通養子縁組をしても、養子と実の親との親子関係は終了しませんが、特別養子縁組の場合は、養子と実の親との親子関係が終了します。
(3)普通養子縁組では、役所に養子縁組届を提出すれば手続き完了ですが、特別養子縁組では、裁判所の審判を得る必要があります」
審判では、どんなことがチェックするのだろう。
「特別養子縁組をむすぶためには、養親になろうとする者が、養子になろうとする者を6ヶ月以上監護養育する必要があります。一種の『お試し期間』のようなことです。
審判では、この監護養育期間の状況などを見て、その養子縁組が子の福祉にかなう適切な縁組なのか、判断されます」
今回の制度導入について、どう見ているか。
「特別養子縁組が実親子関係と同じ関係を作ろうとしている以上、今回の特別養子縁組の養親に『育休』と認める制度は、当然のことです。今まで養親に育休制度の適用がなかったことの方が問題です。
さきほど述べたように、特別養子縁組の要件として6か月以上の監護期間があるので、育休が認められないと、仕事をやめるか、養子縁組をやめるかを余儀なくされてしまいます。
子を望む夫婦が特別養子縁組を考える際に支障となり得る要素は、可能なかぎり排除すべきで、1日も早い制度の導入が望まれます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
高木 由美子(たかぎ・ゆみこ)弁護士
第一東京弁護士会所属。米国・カリフォルニア州弁護士
事務所名:さつき法律事務所
事務所URL:http://www.satsukilaw.com/