子どものために自然豊かな田舎に住みながら、都会で働いて自分のやりたい仕事を続ける。そんな母親のことを「出稼ぎママ」と呼ぶそうです。8月14日放送の「白熱ライブ ビビット」(TBS)が、この出稼ぎママを特集しました。
長野県在住のTさん(40歳)は、4歳と6歳の2児の母親。毎週水曜日の早朝、高速バスで3時間半かけ都内の職場に向かいます。仕事はママ向け情報サイトの編集長。出産を機に自然の中で子育てしたいと考えましたが、仕事を辞めることは考えなかったそうです。(文・篠原みつき)
夫が在宅勤務に。主夫として家事や育児を担当
Tさんは夫婦で話し合い、インターネット関係の仕事をしている夫・信也さん(39歳)が在宅勤務に切り替え、主夫として家事や育児を担当することにしました。
Tさんも在宅でできる仕事があるため、出社は週に3日ほど。水曜と木曜は都内のビジネスホテルに宿泊します。交通費を含めた費用は月に約9万円。「収支はトントン」ですが「総合的には出稼ぎ生活のほうが出費は抑えられる」とのことです。
東京では今より狭い15万円の家賃で暮らしていましたが、現在は6万円。長野は物価が安く、川などで遊ぶためレジャー費もほとんどかかりません。さらに子どもたちが自然を感じながらのびのびと育つことが、地方で暮らす魅力だといいます。
6歳の息子を育てるシングルマザーHさん(38歳)は、福島県の両親のもとで暮らしながら東京に通い、放送作家の仕事を続けています。1か月の半分は東京で過ごすHさん。仕事柄、生活は不規則になりがちで、漫画喫茶で仮眠をとることもあります。
「体力的には厳しいですけど、やはり収入の面で全然違うので」
「いつまで仕事ができるか分からないし、不安定な仕事なので無駄な出費はしたくない」
「トントンなら意味ない」「大変なのは旦那だろ」の声も
Hさんの母さん(62歳)は、「夫婦二人っきりでいるよりも(娘親子と一緒だと)刺激がある」としながらも、娘については「体力的にきつくなってくると思う」と心配していました。
片道4時間の通勤。睡眠時間は2時間という日も少なくないこの生活。それでも、Hさんにとってベストな選択だといいます。「両親が一緒に子育てをしてくれることで、精神的な負担はすごく軽くなりました」と語り、祖父母ならではの子育てのメリットも語りました。
TさんもHさんも、自分のキャリアと育児をなんとか両立しようと「出稼ぎ」という選択肢を採り、さまざまな努力をしています。しかし番組アンケートでは、このような「出稼ぎママ」をしたくない人が6割強を占め、してみたい人は4割近くにとどまりました。
コメンテーターの金慶珠さんは潜在的なニーズはあると指摘しましたが、夫や親の協力がなければ成立しないため、スタジオでも「この人たちは特別なケース」という空気でした。番組を見ていた視聴者はさらに厳しく、「非効率すぎる」などいった冷ややかな意見をネットに書き込んでいます。
「トントンなら意味がないな。むしろマイナス」
「大変なのは旦那だろ」
なぜ「単身赴任パパ」なら言われない批判があがるのか
母親としての務めを十分に果たしていないとして、「鼻持ちならない自己満足で働いてるな」「子どもほったらかしにするなら産むな」などという声もありました。
こうした意見からは、「女は子どもを産むならやりたい仕事があってもあきらめろ」と強いてくる世の中を感じます。単身赴任パパや出稼ぎ男性なら言われない批判です。
「地方には仕事の選択肢が少ない」という問題もあります。しかし彼女たちはメリット・デメリットを理解した上でこの大変な生活を選び、「不可能ではない」ことを示しています。
個人的には、自分の人生をあきらめず頑張っている人たちに手を差し伸べなくても、せめて温かく見守るくらいの世の中になって欲しいと思いました。
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