2015年08月17日 12:01 弁護士ドットコム
中高生を中心に、カップルの動画を投稿するスマホアプリ「MixChannel」が人気だ。月間動画再生数は5億4000万回を超えている。誕生日や交際開始日などを記念して、写真や動画、音楽を組み合わせた動画が多数投稿されており、「キス動画」を公開しているものも少なくない。
【関連記事:リベンジポルノ「顔を隠した裸写真」ツイートで逮捕・・・顔なしでも「アウト」のワケ】
このアプリに対して、日経ウーマンオンラインでは、「後悔しても遅い…女子中高生に流行の『キス動画』の取り返しがつかないリスクとは?」と題した記事を掲載していた。記事によると、同じクラスのクラスメイトに見つかって、嫌がらせを受けたケースもあるそうだ。
さらに、動画の多くはツイッターのアカウントが登録されており、実名やプロフィールが分かるものも多いようだ。このため、就職活動の際に発見されたり、将来別の相手と結婚することになった場合に、問題になる可能性があるという。
MixChannelで「キス動画」を公開することには、どんな法的リスクがあるのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。
「まず、あり得る法的リスクについて指摘しましょう。キス動画を公開すると、自分だけでなく、キスの相手も誰か分かる状態にあるのではないかと思います。キス動画を公開することについて、キス相手の同意を得ているのならばよいのですが、そうでない場合、キス相手のプライバシーを侵害しているということができます。
プライバシー侵害があれば、損害賠償請求や削除請求を受けるリスクがあります。
もちろん、交際中の2人なので、そこまで大事にはならないだろうと思いますが、このような法的リスクがあることは認識しておくべきです」
ほかには、どのようなことが考えられるのだろうか。
「必ずしも法的リスクというわけではないですが、ネットに公開するということ自体に伴うリスクがあります。
ネットに上げてしまったものは、コピーが容易で、拡散していってしまうというリスクがあります。公開した当時はよいかもしれませんが、その後別れてしまったときに削除したいと思っても、削除しきれるかどうかは分かりません。
また、動画が勝手に保存されて、自分の意に沿わない形で利用されたり、加工されてしまうかもしれません。たとえば、何かの機会に自分がネット上で炎上してしまった場合、動画を貼り付けられたり、動画をキャプチャした画像を掲載されるという可能性もあります。プロフィール情報から個人が特定されてしまえば、誰が炎上したのかが分かる形で晒され続けるリスクがあります。
さらに、就職活動の際に、採用担当者が応募者のSNSをチェックすることも増えてきているようですが、私的な動画等を全世界に晒すようなことをしている人は、採用しても同じようなことを無邪気にしそうだということで、採用を敬遠されるおそれもあります。
このリスクは、動画等のコピーが容易という問題がある以上、元を削除したからといって排除し切れないリスクです。私的なものは私的なものとして扱うべきということを、学生のうちからきちんと知る必要があるでしょうね」
清水弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、Twitterに対する開示請求、Facebookに対する開示請求について、ともに日本第1号事案を担当。2015年6月10日「サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル(弘文堂)」を出版。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp