ブレない人ばかりがもてはやされる昨今ですが、どんなときでもブレずにいるのは難しいものがあります。そんな中で、「ブレててもいいんだよ」というメッセージを伝えてくれる本があります。
『人生はブレていい。平成の一休さんのポジティブ・トンチのすすめ』(ワニブックス/刊)の著者、泰丘良玄さんは、臨済宗妙心寺派泰岳寺の副住職を務める禅僧。
本書には「ブレていい」「頑張らなくていい」「逃げていい」「比べなくていい」という4つのキーワードのもの、ブレてもなお幸せな人生を送るためのヒントがあふれています。
いくつか印象的な言葉をピックアップしてみましょう。
■振り切って失敗を重ねるうちに見えてくるもの 仏教には、「中道」という言葉があります。これは「人生、程々でいい」とする考え方で、余計なストレスを回避する上でヒントになる言葉といえるでしょう。ただ若いときほど、自分にとってどのラインが程々なのか分からないのも事実。どうやって、自分なりの中道を見つけていけばいいのでしょうか。
泰丘さんがおすすめしているのは、「振り切ってみる」という方法。本書には「左にブレて、右にブレて、ブレまくって嫌な感情にも向き合って、ようやく真ん中の中道が見えてくる」とあります。
ポジティブ、ネガティブどちらの意味でも、自分にとって何が極端なのかを見極める経験を積むことで、少しずつ「程々のライン」が見えてくるというわけです。そう考えれば、少しくらいの失敗は、むしろ歓迎すべきものといえるのではないでしょうか。
■「ない」ものより「ある」ものに目を向ける 現代人は何かと幸せになろうとしがち。でも泰丘さんは本書のなかで「どんな人もすでに幸せである」と書いています。
この考えは「脚下照顧」という禅語から来ています。「足元を見て自分のことを顧みましょう」という意味の言葉で、要は「自分が今いる場所をしっかり見て、そこがありがたくて幸せなのだと気づく」ことの重要性を説いたものです。
この言葉を頭の片隅におきながら生活することで、「あれがない」「これができない」といった「ない」に目を向けることが減り、逆に「すでに手元にあるもの」に気づけるようになるでしょう。そして最終的には、「ないものを見つけて頑張るのは、やめよう」と思えるようになるのだそうです。
■終わりや別れをポジティブにとらえることの豊かさ 日本には昔から「ご縁」という言葉があります。この言葉、「出会い」とほぼ同義語で使われることが多いのですが、もともとは「別れ」も含まれているそう。泰丘さんの表現を借りれば「人生は出会いによって豊かになり、別れによって深くなる」。
終わりや別れを余儀なくされる状況になっても、むしろそれをポジティブにとらえられるようになれば、たしかに人生は豊かになるような気がします。
■誰かをうらやんでいるのは不健全な状態 泰丘さんは、「憧れをこじらせないこと」もラクに生きるためのコツだと書いています。なぜなら、憧れという感情がねじれてしまうと、「うらやむ」ようになってしまうからです。
本書によれば、もともとは「心病む」と書いて「うらやむ」と読んでいたそう。つまり、誰かをうらやむ状態というのはそれだけ不健全ということなのでしょう。したがって「最近、少し人をうらやむことが増えたかも」と思ったら、できるだけ自分と他人を比べないことが大切です。
泰丘良玄さんはまだ30代前半と若く、人気テレビ番組『ぶっちゃけ寺』にも出演しているだけあって、本書は全編にわたって分かりやすい言葉でつづられています。禅という言葉に少し身構えてしまうという人も、試しにパラパラとページをめくるだけで、心を軽くするためのヒントを得られるかもしれません。
(新刊JP編集部)