2015年08月12日 14:01 弁護士ドットコム
8月2日に開催されたスマホゲーム「モンスターストライク」(モンスト)のイベント「モンストフェスティバル2015」(千葉市・幕張メッセ)で、参加するために野外に並んでいた人たちが、熱中症の症状を訴え、11人が病院に搬送された。
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報道によると、当日は朝から混雑していたため、主催者のミクシィが午前11時半ごろ、入場を制限。以降は並んでも入場できないことを告知したが、午後になっても多くの人が会場の外で並び続けたたという。
同社は8月3日、「モンスト」の公式ホームページ上で、「私どもの想定の甘さと運営の未熟さによるものであり、深く反省するとともに、今回のイベントを楽しみに来場されたみなさまに心よりお詫び申し上げます」と謝罪した。
一般論として、混雑するイベントに並び続けて熱中症になった来場者に対して、運営側は法的責任を負う可能性はあるのだろうか。消費者問題に詳しい上田孝治弁護士に聞いた。
「一般的に、イベントの主催者は、予定していたイベントを実施することはもちろんですが、イベント参加者の生命・身体等の安全に配慮する義務を負っていると考えられます。
主催者がこの安全配慮義務に違反した結果、参加者が熱中症になって治療費等の損害が発生した場合、主催者が損害賠償責任を負うことがあります」
どんな場合、安全配慮義務に違反したことになるのか。
「結果的に熱中症になったからといって、直ちに主催者に法的責任が生じるわけではありません。
主催者側が、参加者が熱中症になることが具体的に予見でき、かつ、そのような事態を避けるために適切な措置をとっていなかった場合、はじめて損害賠償責任が生じることになります」
具体的にはどんな場合だろうか。
「たとえば、参加者が水分補給をするなどの対応をとることが著しく難しい中で、炎天下の野外に混雑した状態のまま、イベント主催者が、多くの人を長時間漫然と並ばせ続けたとしましょう。
この場合、主催者は、イベントに並んでいた参加者が熱中症になることが具体的に予見でき、かつ、適切な措置をとっていなかったといえるでしょう。
こうしたケースであれば、損害賠償責任が生じる可能性は高くなると思います」
今回のケースではどうだろうか。
「今回は、主催者側が、野外で並ぶことをやめさせるために、『これ以上並んでも入場できない』とアナウンスしていたようです。
こうした対応を十分行っていたのであれば、主催者側としては適切な措置をとっていたと評価できるでしょう。
参加者がそれを無視して、自己の判断で並んで熱中症になったとしても、主催者に損害賠償責任が生じる可能性は低いでしょう」
上田弁護士は、「いずれにせよ、イベントの主催者は、来場者数を適切に予測するだけでなく、予測が外れて多数の来場者が来た場合も想定し、具体的な対応をあらかじめシミュレーションしておく必要があるでしょう」と話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
上田 孝治(うえだ・こうじ)弁護士
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行っている。
事務所名:神戸さきがけ法律事務所
事務所URL:http://www.kobe-sakigake.net/