ここ10年で被害が4倍に増えている「高齢者ストーカー」。その背景には、彼らが過ごした1970~80年代の「高度成長」「バブル経済」が少なからず関係しているという分析があるようだ。
8月12日放送の「モーニングバード」(テレビ朝日系)には、高齢者問題を取材しているノンフィクション作家の新郷由起氏が出演し、自らの体験を踏まえながらストーカーには「2つのタイプ」があると指摘した。
お見合いで結婚「やり残したことがある。それは恋愛だ」
1つめのタイプは「隠れ初恋」型。結婚して子どもも儲けたけど「恋愛は未経験」という男性が、「死ぬまでにいちど燃えるような恋をしたい」と年下の女性にストーカー行為をするというパターンだ。
このタイプの男性は「親が勝手に進めた縁談を受け入れて結婚した」という人が多く、世代的にたくさんの恋愛経験をしてその中から相手を選んだ人は少数派。当時は「結婚して一人前」という風潮があったことも関係したようだ。
この点について、高齢者ストーカーの被害者や加害者の支援をするNPO法人ヒューマニティの小早川明子理事長も「やり残したことがある。それは恋愛だ」というのは、加害者が決まって口にする言葉だと明かしている。
現代から見ると、高度成長期を「社畜」として過ごすことを最優先してしまった悲劇ともいえる。やはり仕事と会社に生涯を捧げてしまうと、人生の後半で心に空いた大きな穴が気になって仕方がなくなるのだろうか。
新郷氏自身も、シニア男性3人からストーカーをされた経験がある。取材で1度会っただけなのに「運命の出会い」などと迫られて、60~70代男性に「1日30通以上のメール」「留守電に50件の求愛メッセージ」「初対面で『一緒に暮らしましょう』と懇願」といった行動を取られたという。
バブルでモテた成功体験から「俺が拒絶されるわけがない」
新郷氏があげたもう1つのタイプは「まだイケる」型だ。バブル期に社会的地位のあった人がモテた時代を引きずり、「俺の誘いを断るはずがない」と思い込んでストーカー行為に発展する高齢者も少なくないという。
この手の男性には「成功体験」が強烈に埋め込まれているうえに、年齢とともに魅力と価値がさらに高まっていると思い込んで譲らず、信じて疑わないという。新郷氏は、
「拒絶されても『そんなはずはない、自分が拒絶されるはずはない』としつこく食い下がり、本当に迷惑がられていることが分かると逆上するんです」
とその恐ろしさを説明。MCの赤江珠緒アナは「心情的に分かるけど」としながら、「草食型と肉食型がこういう2つのパターンに分かれたのかな」と、分かりやすく分析した。
しかしこのような高齢者のストーカー行為に、市井の人の反応は冷ややかだ。東京・巣鴨の街角で番組がインタビューをすると「そういう(ストーカー行為をする)人は生活に余裕があるんですよ。余裕があって寂しい」「時間のたっぷりある人だよね」という呆れた声しか聞かれなかった。
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