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ド派手パフォーマンスで存在感を放つベーシスト SiMのSIN、オーラルあきらのベーススタイルから探る

2015年08月12日 10:11  リアルサウンド

リアルサウンド

SiM 6th SINGLE『CROWS』

 バンドのライブパフォーマンスの中で、圧倒的に目立つのは中央に立つボーカリストかもしれない。しかし、うねる低音でフロアにグルーヴを巻き起こすベーシストもまた、注目すべきパフォーマーといえるだろう。ベーシストはバンド内において、クールな演奏者と見られがちだが、自身のキャラクターを打ち出して存在感を放つプレイヤーも少なくない。近年では、女性ベーシストの活躍も際立っており、サカナクションやBase Ball Bear、WHITE ASHを始めとするバンドでは、紅一点のベーシストがクールなパフォーマンスでファンたちを魅了している。そのほか、Hi-STANDARDの影響で増加したベースボーカルバンドや、卓越したテクニックでファンを惹きつける名手により、ベース人気は高まる一方だ。そんな中、いま注目したいのは、思わず目を引く豪快なパフォーマンスを得意とするベーシストである。


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 先日、神奈川・東扇島東公園で自身が主催するライブイベント「DEAD POP FESTiVAL2015」を開催したSiMのベーシスト・SINのプレイは、会場の熱気を常に上昇させるような印象を与える。演奏をしながら、軽快なステップを踏み、ベースとともに激しく回転するパフォーマンスは圧巻だ。今年、武道館ライブも予定しているSiMが、ライブバンドとして人気を博してきたのは、その演奏技術だけによるものではないということが、この気迫溢れるパフォーマンスから伝わるだろう。


 SINがこうしたパフォーマンスを披露するようになった背景には、『ベース・マガジン』(2013年11月発売、リットーミュージック)のインタビューで答えているように、“一番目立ちたい”という思いがあるのだろう。初めてバンドのライブを観た人にとって、ボーカル、ドラム、ギターは一見してその実力や面白みが理解しやすいが、淡々とプレイするベースはわかり難いというのが彼の考えだ。「そういうベタな存在が嫌だからラインも動かしまくるし、パフォーマンスでも動きまくる」と、SINは自らのパフォーマンスについて語っている。一方、演奏面では、the band apartの原昌和やループ・ジャンクションのJUNGO、クラムボンのミトに影響を受けながらも、自らのベース・ラインを作り上げているという。


 派手なパフォーマンスを信条とするベーシストとしては、THE ORAL CIGARETTESのベーシスト・あきらかにあきらも挙げられるだろう。自身のTwitterのプロフィールに「『ストラップは誰よりも短く、脚は誰よりも高く』をテーマにベースを振り回してます」と表記している通り、彼の演奏パフォーマンスは独特のダンスが印象的だ。注目したいのは、ストラップは右肩のみに掛けるという独自スタイル。自由度の高いそのスタイルを活用し、定番曲「大魔王参上」を披露する際は、リズムよく足を頭の近くまで蹴り上げ、観客といっしょに踊っている。


 このベース・スタイルはデビュー前からまったく変わっていないという。彼のダンスのおかげで、初めてライブを観たファンもリズムをとりやすく、会場に一体感をもたらすのに一役買っているのが印象的だ。さらに彼は、コーラスとして歌声まで披露するなど、芸達者ぶりを見せている。THE ORAL CIGARETTESは、「いつもその場の雰囲気を引っくり返そう、番狂わせを起こそう」をテーマに活動しているが、そのアティテュードをもっとも体現しているのが、ほかでもないベーシストのあきらかにあきらではないか。


 低音のため、演奏面ではそのラインが目立ちにくい楽器ではあるが、しかしフロアを揺らし、リスナーに大きな一体感をもたらすことができるベース。今回、紹介したふたりのように、パフォーマンスにも力を注いでいるベーシストは、そんなベースの魅力を全身で表現しているといえるだろう。夏フェスシーズン真っ盛りで、生のライブ演奏に触れる機会が多いいま、改めてベーシストたちのパフォーマンスに注目してみると、いつもとは違った楽しみ方ができるかもしれない。(大和田茉椰)