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AKB48、乃木坂46、GALETTe…アイドル界でなぜ“セカンドキャリア組”が増えている?

2015年08月12日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

AKB48『ハロウィン・ナイト Type B 【初回限定盤】』

 アイドルグループ・GALETTeに、元Party Rocketsの藤田あかりと、元Happy Danceの野田怜奈が加入した。


 アイドルが一度グループを脱退し、別のグループで再度キャリアをスタートさせることは、ここ数年はあまり珍しいことではなくなった。現に『第2回AKB48グループドラフト会議』でAKB48に加入した樋渡結依は、子役とアイドルグループ・からっと☆の活動を経て、3チームが競合した存在であるし、乃木坂46は衛藤美彩や中元日芽香は元ローカルアイドルグループのメンバーを経験しており、1期生の柏幸奈が元ももいろクローバーであったことも、結成当初は話題になった(現在はグループを卒業)。


 ここまで業界内でグループ活動経験のある人材が増えたのはなぜだろうか。アイドル専門ライターの岡島紳士氏はこう語る。


「中学校でダンスが必修化された近年において、ダンス・ボーカルスクールへ、習いごと感覚で通う子供たちが増えています。aaa(エイベックス・アーティストアカデミー)やEXPG(LDH運営のスクール)などが全国各地で展開されている状況です。また、スクールでは目立った人材を個々やグループ化して売り出すことでブランディングを図るところも多いため、かなり早い段階でどこかに所属している人が生まれている実情がある。スクールでキャリアを積んで他のグループに行くこともあれば、都会だとスカウト経由でモデルを通ってグループに加入したり、誰でもアイドルを自称してノルマさえ払えば地下アイドルとしてライブに出られたりと、アイドル自体の分母が増えたという要因も考えられます。実際に新人女優さんやアイドルグループにインタビューをしても、『アイドルを目指してるわけじゃないけど、歌って踊るのが好きだからスクールに通ってた』という子に出会うことも少なくありません」


 また、運営側の考え方も“経験者を獲得する”というメリットを、以前より重視する方向にシフトしているという。


「運営側の視点としては、以前の活動を“色が付いてるもの”とみてネガティブに解釈するか、すでにお客さんが付いており、スタートダッシュが早いから得と捉えるかの2つで、近年は後者の考え方をする運営が多いように感じます。当たり前のことですが、オーディションで経験者と素人が並んだとき、はっきりとパフォーマンスに差が出るでしょうし、何らかのキャリアを経験するのが当たり前になっているなかで、地下アイドルの経歴などは『どうせ世間に出ても、大半の人が知らないしいいのではないか』という判断をするところもあるのではないでしょうか」


 さらに「アイドルファンの数が増えたこともその原因」と同氏は続ける。


「例えば既に世間的にも人気のあるグループにインディーズ系アイドルグループの元メンバーが加入したとしても、前グループ経歴を知らないファンの方が大半、という状況になります。また、例えば大手事務所が何十万、何百万のファンを獲得するような“売れる”アイドルを作ろうとした場合、『数百人のファンを持った子が入ってきたとしても気にしない』と考えることも推測できます」


 最後に同氏は、アイドルファンが増加したことで、人材移動がネガティブなだけではないものに変わっていった側面もあるのではと推察した。


「昔はアイドルファンの数自体が少なく、同じ規模感のグループ同士で人材が回った場合は、ネガティブなイメージがどうしても付きまとうことになりがちでした。ただ、『TOKYO IDOL FESTIVAL 2015』の入場者が5万人を超えたように、新規のファンが増加している近年のアイドルシーンにおいては、有力な人材がどんどんキャリアアップしていくことが、前述した数々の理由から、決してネガティブなだけではない側面を持っているように思います」


 経験者の人材増加により、演者とファンがさらに増え続けるアイドルシーン。この価値観が当たり前になった先には何が待っているのか、今後も経過を見守りたい。(中村拓海)