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生徒340人の財布・スマホが盗まれた! 早稲田アカデミーは「善管注意義務」違反?

2015年08月11日 17:11  弁護士ドットコム

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東京の大手学習塾「早稲田アカデミー」が長野県のホテルでおこなっている夏合宿で、参加している中学3年生約340人分の財布やスマートフォンがなくなる事件が起きた。警察は窃盗事件として捜査している。


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報道によると、この合宿は小中高生約1万2000人が参加。そのなかの中学3年生約4200人が、8月8日から長野県・志賀高原の複数のホテルにわかれて合宿している。そのうちの1つのホテルで、塾側が8日夕に約340人から、財布やスマホなど貴重品を布袋に入れて預かっていたところ、翌9日朝、なくなっているのに気づいた。



ホテルのロビーをホワイトボードで区切っただけの場所に、ダンボールに入れて保管されていた。当時、ホテルの玄関はカギがかかっておらず、保管場所には誰でも自由に出入りできる状況だった。塾側は「管理の仕方に落ち度があった」と謝罪したようだが、法的にはどんな責任が発生するのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。



●塾は「善管注意義務」を負っていたと考えられる


「今回、早稲田アカデミーは、夏合宿という塾の行事の中で、生徒から貴重品を預かったわけですから、生徒に対して『善管注意義務』を負っていたと考えられます。



この『善管注意義務』とは、『善良な管理者としての注意義務』の略です。少しわかりにくい法律用語ですが、その事務を任された人の職業や能力、地位等に照らして、一般に期待される水準の注意義務のことをいいます。



法律上、商人がその営業の範囲内において寄託(物を預けること)を受けたときは、有償・無償を問わず、『善管注意義務』を負うという規定があります(商法593条)。早稲田アカデミーは株式会社であり、『商人』なので、この規定にあてはまると思います」



秋山弁護士はこのように述べる。この善管注意義務を怠ると、どうなるのだろうか。



「今回、早稲田アカデミーは、多数の生徒から財布やスマホといった貴重品を預かったにもかかわらず、ホテルのフロントに預けず、ロビーをホワイトボードで区切っただけで、誰でも自由に出入りできる場所に置いたままにしていたようです。



もし仮に、監視のための人員も配置していなかったのであれば、『善管注意義務違反』により、生徒に対して損害賠償義務を負う可能性が高いでしょう」



●財布とスマホで違ってくる?


具体的には、損害賠償の内容はどうなるのだろうか。



「財布が盗まれた場合については、中に入っていた現金や電子マネー付きのカード相当額(再発行不可の場合)等の賠償が必要になります。



また、スマホには個人のメールアドレス・電話番号やメール・LINEのやり取り、写真等のプライベートな情報が多数含まれています。



それらが他人の手に渡ったことによる精神的苦痛に対しての慰謝料も考えられます。もし、それらの情報が第三者に流出したことにより嫌がらせの被害を受けたりしたら、賠償額も拡大することがありえます。



ただし、一般にスマホにはパスワード等によるロック機能がありますので、そのような機能を使っていなかった場合、生徒にも過失があったとして、『過失相殺』により賠償額が減額される可能性もあります」



秋山弁護士はこのように述べていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
秋山 直人(あきやま・なおと)弁護士
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は溜池山王にあり、弁護士3名で構成。原発事故・交通事故等の各種損害賠償請求、企業法務、債務整理、契約紛争、離婚・相続、不動産関連、労働事件、消費者問題等を取り扱っている。
事務所名:たつき総合法律事務所
事務所URL:http://tatsuki-law.com